クリスティーズは、10月2日に“An Eye Towards the Real: Photographs from the Collection of Ambassador Trevor Traina”(132点)を、フィリップスは、10月9日に春に続く単独コレクションのセール“Photographs from the Martin Z. Margulies Foundation Part II”(122点)と、複数委託者による“Photographs”(205点)を、サザビーズは、10月16日に“Ansel Adams: A Legacy | Photographs from the Meredith Collection(Online)”(96点)、10月17日に複数委託者による“Photographs(Online)”(122点)、10月18日に“The World of Eugène Atget: Photographs from The Museum of Modern Art(Online)”(60点)を開催した。
今シーズンの目玉は前述したサザビーズで開催されたアンセル・アダムスの単独セールだった。 「Ansel Adams: A Legacy, Photographs from the Meredith Collection」と銘打って開催されたセールは、オークションに出品されるアンセル・アダムス写真コレクションとしては、最も重要なもののひとつであるとの前評判だった。同コレクションは、アンセル・アダムス本人が選び、後にフレンズ・オブ・フォトグラフィーに贈られた写真で構成されている。フレンズ・オブ・フォトグラフィーは、写真というメディアへの情熱を追求する写真家の多くの世代にインスピレーションを与えた非営利団体。そこには、1960年代初期のプリントから大判の壁画サイズの1970年代のプリントまで、珠玉の美しい作品が含まれている。象徴的な「Moonrise, Hernandez, New Mexico」、ドラマチックなヨセミテ渓谷の景色、そして非常に貴重な太平洋岸のサーフ・シークエンスなど、アンセル・アダムスの最も愛されている写真を包括的に概観するコレクションになっている。 出品点数は96点、すべてが落札される業界用語のホワイト・グローブを達成。総売り上げは約456万ドル、1点の平均落札額47,580ドルだった。そして高額落札の上位3位までが同オークションに出品されたアンセル・アダムス作品だった。
アンセル・アダムスに続いた高額落札4位は、クリスティーズは、10月2日に“An Eye Towards the Real: Photographs from the Collection of Ambassador Trevor Traina”に出品されたアンドレアス・グルスキー作品の$352,800、高額落札第5位は、フリップス“Photographs”に出品されたアルフレッド・スティーグリッツ作品の$304,800だった。
1.Ansel Adams, “Aspens, Northern New Mexico (Vertical), 1958” Sotheby’s NY, lot63 mural-sized gelatin silver print image: 33⅜ by 26⅜ in. (84.8 by 67 cm.) Executed in 1958, probably printed in the 1970s. 落札予想価格 $150,000~250,000 .- $720,000(約1.08億円)
2.Ansel Adams, “Surf Sequence, San Mateo County Coast, California, 1940”Sotheby’s NY, lot19 5 gelatin silver prints(5点セット) images approximately 11 by 13 in. (27.9 by 33 cm.) Executed in 1940, printed between 1981 and 1982. 落札予想価格 $200,000~300,000 .- $576,000 (約8640万円)
3.Ansel Adams, “Moon and Half Dome, Yosemite National Park, California, 1960” Sotheby’s NY, lot15 mural-sized gelatin silver print image: 29¼ by 26 in. (74.3 by 66 cm.) Executed in 1960, probably printed in the 1960s. 落札予想価格 $100,000~200,000.- $384,000 (約5760万円)
4.Andreas Gursky, “Dortmund, 2009” Christie’s NY, lot77 chromogenic print image: 113 ½ x 80 in. (288.2 x 203.2 cm.)、edition 2/4 落札予想価格 $300,000~500,000 .- $352,800 (約5292万円)
5.Alfred Stieglitz, “From the Back Window–291–Snow Covered Tree, Back-Yard, 1915” Phillips NY, lot282 Platinum print 9 5/8 x 7 5/8 in. (24.4 x 19.4 cm) 落札予想価格 $250,000~350,000.- $304,800 (約4572万円)
またダフィーは時代を代表する、シドニー・ポワティエ、マイケル・ケイン、トム・コートニー、サミー・デイヴィス・ジュニア、ニーナ・シモン、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、チャールストン・ヘストン、ウィリアム・バロウズ、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブリジッド・バルドーなどのセレブリティーを撮影している。特にミュージシャンのデヴィッド・ボウイ(1947.1.8 – 2016.1.10)と深い交流があり、70年代には“ジギー・スターダスト Ziggy Stardust”(1972年)、“アラジン・セイン Aladdin Sane”(1973年)、“シン・ホワイト・デューク The Thin White Duke”(1975年)、“ロジャー Lodger”(1979年)、“スケアリー・モンスターズ Scary Monsters”(1980年)の5回の撮影セッションを行っている。特にアラジン・セインのアルバムジャケットに使用された写真は極めて有名で、「ポップ・カルチャーにおけるモナリザ」とも呼ばれている。これらの珠玉のポートレートはパート2で約25点が展示される。ボウイの特集コーナーも設置する予定だ。
ダフィーは、撮影に多くの自由裁量が与えられたファッションやポートレイト写真の延長線上にアート表現の可能性があると信じていた。しかし彼の活躍した時代のファイン・アート写真界では、モノクロの抽象美やプリントのクオリティーを愛でるものが主流だった。作り物のイメージであるファッション写真にアート性はないと考える人も多かった。ファッション写真家が繊細な感性から紡ぎだす、時代の気分や雰囲気はアート表現だとは認識されていなかったのだ。彼は、「In my time there was no such things Art photography(私の時代にはアート・フォトグラフィーのようなものは存在していなかった)」と語っている。アート志向が強いダウィーは写真表現の未来に絶望する。そして1979年には写真撮影の仕事をやめてしまい、スタジオ裏庭で多くのネガを燃やしてしまう。ファッションやポートレートがファイン・アートとして業界や市場で認識されるのは1990年代になってから。いまでは最も注目されるコレクション分野に成長している。
しかしこれには後日談がある。2006年から息子のクリスがダフィーの資料精査を開始するのだ。幸運にも全てのネガが消失していないことが判明し、新たに多くのネガが再発見された。その後2011年に、ダフィー作品は「DUFFY… PHOTOGRAPHER」(ACC Art Books)として写真集化が実現するのだ。その後、60年代ブームの訪れとともに、当時に活躍したベイリー、ドノヴァンに次ぐ第3の男として再注目され、写真展が世界中で数多く開催されるようになる。2013年夏、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館で開催された“DAVID BOWIE is”展では、ダフィーのアラジン・セイン・セッションでのボウイが目を開いた未使用カット作品がメイン・ヴィジュアルに採用され大きな話題になり、ダフィー人気が再燃するのだ。(同展は2017年東京で巡回開催)。
ブリッツでは、2014年の「DUFFY… PHOTOGRAPHER」(ダフィー・フォトグラファー展)、2017年の「Duffy/Bowie-Five Sessions」(ダフィー・ボウイ・ファイブ・セッションズ展)以来の開催となる。本展で展示されるのは、作家の意思を受け継いだ息子クリス・ダフィーが運営するダフィー・アーカイブが監修/制作したエステート・プリント作品。また日本のコレクター向けに、今回のブリッツでの写真展限定プリントもリーズナブルな価格で特別販売される。サイズ約31 X 21cm/27 X 27cm、プリントにアーカイブのエンボス/サイン入り作品証明書付きとなる。コレクター初心者には最適の写真作品だろう。60年代~70年代の気分や雰囲気が楽しめる、ダフィーによる珠玉のファッション/ポートレート作品をぜひご高覧ください。
DUFFY…FASHION/PORTRAITS ダフィー…ファッション/ポートレイト展 Part 1 FASHION : 2024年10月16日 (水)~12月22日 (日) Part 2 PORTRAITS : 2025年1月15日 (水)~3月22日 (土) 1:00PM~6:00PM/休廊 月・火・/入場無料
ブリッツ・ギャラリー 〒153-0064 東京都目黒区下目黒6-20-29 TEL 03-3714-0552 JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 / 東急東横線学芸大学下車徒歩15分
写真家の細江英公さんが、2024年9月16日(月)、91歳で永眠されました。私は生前の細江さんに何回か会って話をしたことがあります。 最初は、たしかファインアート写真市場についての業界団体の講演会にともに参加した時でした。君の話は講義だな、と言われた記憶があります。たぶんまだ若かった私の話の内容が小難しかったのだと思います。その時の、自身の体験がもとに話された写真プリントに関するトークは経験の浅いギャラリストには非常に参考になりました。 細江さんが海外で展覧会を開催した時に、先方が写真を買い上げてくれたことになったそうです。帰国後に、プリントして万年筆でサインをして現地に送ったところ、インクは色が抜けたり変色するので鉛筆でサインするようにと返却されてきたというエピソードはいまでもよく覚えています。私の記憶は定かではないのですが、たぶんそれは1969年に米国スミソニアン博物館で開催された海外初個展の「Man and Woman」の時のことではないかと思います。
定型ファインアート写真は様々に定義する可能性があると考えている。たとえば、カルチェ=ブレッソンの写真撮影スタイルの「決定的瞬間」。それはストリートでのスナップ写真において、構図の中で絶妙なバランスと調和がとれた一瞬をカメラで切り取り残す行為。その行為追求が撮影の目的であると解釈される場合が多いが、撮影者が無心の状態で世界と対峙して、ストリートシーンの中に絶妙な「決定的瞬間」を発見した時にフレーミングしてシャッターを押した場合もあるだろう。そのような調和を切り取った写真は定型ファインアート写真の「Zen Space Photography」と同様な意味合いを持つと考える。
定型ファインアート写真「Zen Space Photography」の基本を今一度確認しておこう。 そこで提案しているのは、決まり事として撮影者が思考(思い込み)にとらわれていない精神状態、つまり無心で自然や世界と対峙することが前提となる。ワークショップでは、頭ではなく心で世界と接するというように説明している。 そして調和して美しく整っている瞬間の訪れを発見した時に撮影した写真。 そのようなシーンは頻繁には出現しない。次々と自然と湧いてくる思考にとらわれないように、心を無の状態にして行動している時にふと現れるのだ。普段の忙しい日常生活から離れた旅行の際はそのような精神状態を維持しやすい。だから、普段に持ち歩くスマホやコンパクトデジカメが撮影に向いている。
自然と湧いてくる思考を消し去り無の精神状態になることで、私たちは日常の思い込みから解放される。社会生活を送っていると悩み事は多いのでこれは容易ではない。しかし写真撮影がそのきっかけになるかもしれない。 その行為の実践自体が「Zen Space Photography」の作品コンセプトになる。「決定的瞬間」に戻ると、それゆえに最初から頭でそのようなシーンを撮ることを目的としたもの、また人や背景の動きを予想して意図的に撮影されたものとは意味合いが違うと考える。自然風景の中に、モノクロームの抽象美、グラフィカル、デザイン・コンシャス、色彩、詩的な印象の美を意識的に発見しようとする、いわゆるインテリア用写真制作と同様の行為となる。それは人の思考により生み出された別の種類の写真となる。 写真史的にも、カルチェ=ブレッソンが無心で切り取った、すぐれた「決定的瞬間」の作品は、完璧な構図や抽象性、プリントの質を追求した伝統工芸の職人技とは一線を画している。それらは定型ファインアート写真の意味合いを持った作品であると再解釈可能なのではないか。20世紀写真市場での彼の代表作の高い評価はこのような背景があると理解している。「決定的瞬間」をとらえた写真には、撮影者の姿勢の違いにより、この2種類が混在しているのだ。
「Zen Space
Photography」は、写真撮影を通して無の精神状態になることを目指す。そして「決定的瞬間」を意識することで、世の中の通常状態が決して秩序ではなく混沌なのだと気付かせてくれる。これらがきっかけで、自分の思い込みに気付き、世の中を違う視点から認識できるようになれば全く異なる世界観が描けるようになる。間違いなく、私たちの生き方に影響を与えると思われる。世の中は混沌と偶然性が支配する。その中で、生き難いのは誰にとっても当たり前なのだ。それに気付けば開き直ることができ、少しは楽な気持になるのではないか。
中国からはチェン・ウェイ作品が展示されている。令和5年度の新規収蔵作品とのことだ。彼のプロフィールには、メインの展示になっている「In the Waves」シリーズは、ダンスクラブで音楽に陶酔する若者を写しだし、彼が作り出すシーンにおいて、今日の中国における社会問題を表現している、と記載されている。 社会問題とは非常に幅広い意味を持つ。それは何なのかに疑問に感じたので、会場にいた本人に通訳を通して質問してみた。 私たちは、クラブは一般の若い世代が集う西洋的な息抜きやストレス発散の場だと感じる。しかし、彼によると中国のクラブ文化は80年代に独自に発展したとのこと。西洋のクラブ文化が中国に輸入されたのではないそうだ。したがって作品制作には西洋文化/民主主義と中国文化/共産主義とは関係性の提示はないそうだ。そして中国でそこに集うのは、一般人ではなくインテリ層だったとのこと。たぶん当時のクラブの若い人たちは中間層以上の社会的に恵まれた人々であり、彼らが日常生活のストレス発散目的で踊りに陶酔したのだろう。会場で展示されている2点の大判写真「In the Waves」のクラブシーンは2013年制作だ。 私は同じ政治思想を持つ国家のキューバを思い出した。米国人写真家マイケル・ドウェックは「Habana Libre(ハバナ・リブレ)」(2011年)で、西洋社会では知られていないキューバのクリエイティブ・クラスという階級の存在を私たちにドキュメントを通して知らせてくれた。キューバの多くの住民はいまでも経済的には非常に貧乏だ。しかしキューバ政府が文化振興に力を入れた結果、アーティスト、作家、俳優、モデル、ミュージシャンたちの一種の特権階級が生まれているとのこと。彼らは裕福ではないが、ファッショナブルな生活を楽しんでおり、そこにも彼らがダンスを楽しんでいるナイトクラブのシーンが撮影されていた。
本展はファインアート写真のコレクションに興味ある人、写真撮影が趣味の人には今年の夏休み必見の写真展だ。 地下1階の展示室では、絵本作家/メディア・アーティストの岩井俊雄の展覧会「いわいとしお X 東京都写真美術家 光と動きの100かいだてのいえー19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ」も開催中。こちらは子供や学生を意識した展示内容になっているので、家族で一緒に訪れても皆が十分に楽しめるだろう。
本書はスタンフォード大学のカンター・アート・センター(Cantor Arts Center)で2014年秋に開催された、50年代アメリカで撮影されたフランク作品に初めて注目した展覧会に際して刊行。1991~2011年までニューヨーク近代美術館の写真部門チーフ・キュレーターだったピーター・ガラッシ(Peter Galassi)が企画編集を担当。未発表作による「The Americans」の第2巻ともいえる内容だが、収録131点中の22点はオリジナル版収録作と重複している。ガラッシはエッセーで、フランクのルーツであるプロ・フォトジャーナリズムを探求。また当時主流だったグラフ雑誌と一線を画して、35mmカメラで作家性を確立させた彼の革新的な写真提示方法を分析。1949~1961年にわたる全米旅行の過程を記した見開きの詳細マップ”Locations of photographs in 「The Americans」 and 「Robert Frank in America」”も収録され、収録写真のページ・ナンバーが地図の撮影地横に記載。「The Americans」が好きな人は必読。 ハードカバー: 195ページ、サイズ2.5 x 23.5 x 24.8 cm、モノクロ131点を収録。 (マーケット情報) 状態により、50ドル(7,500円)~100ドル(15,000円)程度で購入可能
ジョセフ・クーデルカ(1938-)は、旅に生きるチェコスロバキア出身の写真家。60年代からエンジニアのかたわら劇場写真家としてキャリアを開始する。1961~1967年にかけて主に東欧でジプシーを撮影。1968年には反ソ連デモが続くプラハへのソ連軍侵攻をドキュメント。1970年に英国に亡命し、1971年よりマグナム・フォトのメンバーとなる。 被写体のジプシーのように、自由に放浪する生き方自体をテーマとしたクーデルカの作家性はアート界でも広く認められるようになる。いまでは世界中の美術館で展覧会が開催されるとともに、作品がコレクションされている。2013年に東京国立近代美術館で個展、2014年には米国で回顧展が行われている。 本書は、クーデルカが祖国を脱出後に欧州や米国を放浪しながら撮影した代表作「Exiles」の待望の改定版。「Exiles」は流浪者や亡命者の意味。彼は広告や報道の仕事を行うよりも、自由に放浪する生き方をえらび、世界各地の辺境で生きる運命を受け入れている人々の誕生、結婚、死などの日常生活を粘り強く撮影している。特にスペイン、アイルランド、イタリア、ギリシャなどの同じ場所を何度も訪れている。 本書のオリジナル版は、1988年にパリの国立写真センターとニューヨークのICP(国際写真センター)で行われた展覧会の際に刊行。(フランス語版、英国版、米国版が同時刊行) 新版では未発表作10点が追加収録されている。エッセーは、クーデルカの写真集や美術館展企画を手掛けているロベール・デルピエールが担当。 ハードカバー: 188ページ、 サイズ30.4 x 27.4 x 2.4 cm、約75点の図版を収録。 (マーケット情報) 状態により、50ドル(7,500円)~100ドル(15,000円)程度で購入可能
・The Open Road: Photography & the American Roadtrip David Campany(デビット・カンパニー著) 出版社: Aperture (2014/10/31) ISBN-10: 1597112402 ISBN-13: 978-1597112406 出版社のウェブサイト 著者のウェブサイト
またカンパニーは紹介分で「ロード・トリップが終わった後に何が起きるべきか?それは、現状への復帰か? 革命的な新しい人生の始まりか?将来の見通しのいくつかのマイナーな調整だろうか?明らかに西部にドライブしていくだけでは約束の地(Promised Land )に着くことはできないのだ」とも語っている。本書が伝えたいのはアメリカン・ドリームとその挫折の歴史なのだろう。 ハードカバー: 272ページ、サイズ 30 x 25.6 x 3.8 cm、約150点の図版が収録。
(収録写真家) Robert Frank, Ed Ruscha, Inge Morath, Garry Winogrand, Joel Meyerowitz, William Eggleston, Lee Friedlander, Jacob Holdt, Stephen Shore, Bernard Plossu, Shinya Fujiwara, Victor Burgin, Joel Sternfeld, Alec Soth, Todd Hido, Ryan McGinley, Justine Kurland, Taiyo Onorato and Nico Krebsなど (マーケット情報) 状態により、200ドル(30,000円)~300ドル(45,000円)程度で購入可能
(フォトブック・コレクションの購入ガイド)
もし欲しい洋書フォトブックが見つかったら、まず通販大手のアマゾンで在庫を検索してみよう。アマゾンでは、新刊と古書を同時に販売している。本の大体の相場観を掴むのにとても便利だ。ここで紹介しているリストにはISBNを記載しているので、この番号をコピペして在庫を調べることから始めればよい。本によっては、流通在庫があり新品で購入可能な場合もある。特に名作の改訂版は、出版社も多めに印刷する場合が多い。売り切れて絶版になった場合、昨今の急激な円安と送料高騰により、もしAmazon Co.jpに日本の業者が本を売りに出していたら一番安い価格である可能性が高い。しかし、古書の場合は新品と違い状態は個別の本ごとにかなりばらつきがある。また状態の良し悪しの判断は主観的だ。もし状態にこだわるのなら、古書店や専門店に行って個別に状態を確認して納得したうえで購入することを薦める。ブリッツで定期的に行っている「Photo Book Collection」ではすべての本の状態を確認できる。
・ダイアン・アーバス 「Identical twins, (Cathleen and Colleen), Roselle, New Jersey, 1966/1967-1969」
落札予想価格80万~120万ドルのところ、1,197,000ドル(@155/約1.85億円)で落札。本作は、1967~1969年にかけて、 ダイアン・アーバス本人によりプリントされた、イメージサイズ38.1
x 36.1 cmの極めて貴重なヴィンテージ作品。来歴を見ると、「Sotheby’s, New York, April 27, 2004, lot 11」 と記載されている。当時の落札価格は、約47.8万ドル、約20年で約2倍になっている。
・リチャード・アヴェドン 「Marilyn Monroe, Actress, New York City, 1957」
アヴェドンの代表作が、落札予想価格60万~80万ドルのところ、882,000ドル(@155/約1.36億円)で落札。エディション10、AP2、イメージサイズ100.3 x 77.4 cmの大判サイズ作品。
〇クリスティーズ 「20th Century Evening Sale」、5月16日
・アンドレ・ケルテス 「Satiric Dancer, 1926」
落札予想価格50万~70万ドルのところ、567,000ドル(@155/約8788万円)で落札。本作は、イメージサイズ9.5
x 7.5 cmの極めて貴重なヴィンテージ作品。
・エドワード・ウェストン 「Shell (Nautilus), 1927」
落札予想価格80万~120万ドルのところ、1,071,000ドル(@155/約1.66億円)で落札。本作は、イメージサイズ24.1
x 18.4 cmのヴィンテージ作品。来歴を見ると、「Sotheby’s,
New York, 13 April 2010, lot 122」 と記載されている。当時の落札価格は、落札予想価格30万~50万ドルのところ、評価上限の2倍の1,082,500ドルだった。約15年で価値がほとんど変わっていないのが興味深い。2010年、写真分野ではまだ20世紀写真の評価が高かった。たぶん落札者が過大評価したのだろう。
〇クリスティーズ 「POST-WAR AND CONTEMPORARY ART DAY SALE」、5月17日
・杉本博司 「North Pacific Ocean, Ohkurosaki, 2002」
落札予想価格25万~35万ドルのところ、327,600ドル(@155/約5077万円)で落札。エディション5、イメージサイズ119.4 x 149.2 cmの大判作品。2013年に、サンフランシスコのフレンケル・ギャラリーが販売した作品。
〇サザビーズ 「Contemporary Day Auction」、5月14日
・シンディー・シャーマン 「Untitled #420, 2004」
二つのパートから成るカラー作品、落札予想価格25万~35万ドルのところ、330,200ドル(@155/約5118万円)で落札。エディション6、イメージサイズはそれぞれ186.1 by 120 cmの大判作品。