アート系ファッション写真のフォトブック・ガイド(連載) (7)
“Appearances : Fashion Photography Since 1945”の紹介

前回に続きロンドンのケンジントンにあるヴィクトリア&アルバート美術館で1991年に開催された、1945年以降のファッション写真に焦点を合わせた展覧会カタログを紹介する。

戦後のファッション写真のアート性を定義したのはロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館なのだ。歴史学者のエマニュエル・トッドは“問題は英国ではない、EUなのだ”(文春文庫)で、絶対核家族のアングロサクソン文化の不安定性、柔軟性を指摘し、イギリスを断絶文化と呼んでいる。イギリス文化を遡ると突然の変化にぶつかるとし、とても振幅の激しい文化だからこそ、ビートルズやデヴィッド・ボウイがでてくると書いている。いままで無視されていたファッション写真をアートの文脈で評価する柔軟性を英国の美術館は持っていたのだと思う。
そういえば、ロックスターのデヴィッド・ボウイのアート性に注目して、展覧会“David Bowie is”を企画したのもヴィクトリア&アルバート美術館なのだ。

本展は“SHOTS OF STYLE”も手掛けたマーティン・ハリソンがキュレーションを担当。前回の展示でファッション写真のアート性に確信を持ち、さらに調査を進めて自らの価値基準を展開していったと思われる。
カタログとなる本書は、ファッション写真を扱うディーラーにとっての教科書。私も何度も読み返し、多大な影響を受けている。ちなみに、1991年に開催された実際の展覧会をロンドンで見てギャラリーの方向性を決めた。

ハリソンは、本書巻頭でスーザン・ソンダクの”偉大なファッション写真は、ファッションを撮影した写真以上のものだ”という発言を引用。洋服の情報を正確に伝えるファッション写真が存在している一方で、最先端の写真家による洋服販売目的にあまりとらわれないファッション写真が存在するとしている。

彼はいままで美術館やギャラリーで紹介されることがなかったリリアン・バスマン、ギイ・ブルダン、ソ-ル・ライターなどのファッション写真家を初めて本格的に取り上げている。本書がきかっけで、90年代後半にファッション写真家の再評価が行われ、ギャラリーでの写真展開催や写真集刊行につながっている。
またハリソンは、リチャード・アヴェドン、アーヴィング・ペン、ヘルムート・ニュートンなどのようにファッション分野中心に活躍していた人以外の、ドキュメント系のウォーカー・エバンス、ブルース・ダビットソン、ロバート・フランク、ルイス・ファー、映画監督として知られるジェリー・シャッツバーグ、現代アート系のナン・ゴールディン、シンディー・シャーマン・ロバート・メイプルソープらのファッション写真にも注目している。

表紙に採用された動きのある美しいファッション写真は、ニューヨークのストリート写真で知られるルイス・ファーの“French Vogue、March 1973”(fashion:Gres)。(上記画像を参照)

アレクセイ・ブロドビッチの“Ballet”の画像

本書は、過小評価されていたハーパース・バザー誌アート・ディレクターだったアレクセイ・ブロドビッチも積極的に取り上げている。彼はファッション写真、に動きのフィーリングの取入れを求め、ドキュメンタリー写真の方法の採用を写真家にアドバイスしている。それは、動きのブレ、カジュアルなフレーミング、力強いクローズアップで、ヴィジュアルの力強さをページ内で最大限に生かすことだった。ブロドビッチはその信条を、自らの写真集“Ballet”(1945年刊)で提示し、それはハーマン・ランドショフ、そしてリチャード・アヴェドンに受け継がれていく。彼は1941年から約20年間に渡り、いわゆる“デザイン・ラボラトリー”で、グラフィック・ジャーナリズム、広告、デザイン、ファッションの指導を行っている。アーヴィング・ペンは、彼の戦後ファッション写真への長きにわたる影響について指摘。“すべての写真家は、その人が知っていようがいまいが、すべてがブロドビッチの生徒だ”と語っている。

本書では、1980年代に登場したブルース・ウェバーも高く評価している。彼は新鮮味がないプロのモデルを採用しないことで知られるが、自分のテイストを追求した写真をファッションでも追及し、ファッション写真をブルース・ウェバー写真にしたとハリソンは指摘している。ウェバーは自身のファッション写真観を、“人がライフスタイルを表現し、とてもパーソナルな着こなしをしているとき、それらを撮影した写真は私たちの人生に何かをもたらす”と語っている。ウェバーは、ロバート・メイプルソープとともに、男性がモデルのファッション写真を作り上げた点も重要だろう。
1980年には、ヴォーグ英国版、イタリア版がブルース・ウェバー、パオロ・ロベルシ、ピーター・リンドバークなどに多くの自由裁量を与えた点にも注目している。この時代にファッション写真が洋服の情報を提供するメディアから大きく変化していくのだ。いわゆるアート系のファッション写真は、洋服を撮影した写真だけではなく、時代の気分や雰囲気が反映された写真であることを多くのヴィジュアルを通して提示している。それらは、洋服の情報をうまく美しく伝えることを意識するのではなく、ファッションが存在する時代に対する明確な認識があり、鋭い嗅覚でその時代の持つフィーリングを写真で見る側に伝えようとしている写真家による作品を意味するのだ。

ハリソンは、本書を通して戦後ファッション写真が洋服の情報を提供するメディアから写真家の自己表現の一部のメディアに進化していく過程を紹介している。最後に、彼はそれを“ファッション写真の終わり”と表現している。その象徴として最終ヴィジュアルに、リチャード・アヴェドンが1989年に雑誌エゴイストのために女優イザベル・アジャーニを起用して撮影した作品を紹介している。(上記画像を参照)何かにとりつかれたかのようにやや不気味な表情のアジャーニを墓地で撮影したアレ・ボケ写真を、アヴェドンは“ファッション写真の終わり”と関わると説明しているという。彼女は、撮影用に用意されたハイ・ファッションの洋服ではなく、アヴェドンが所有する古いボロボロのコートを着て、自己が無視され虚構の中に生きるセレブリティーの苦悩を表現。文字通りこの写真こそはファッションの墓場で笑っているモデルということなのだろう。

ハリソンは、90年代に入り洋服の情報を提供するファッション写真は残るが、今やそれを超えた新しい種類の、人のスタイルや意思表示を語るファッション写真が存在するとしてまとめている。これは、現代アート表現の一部として、価値観が多様化した現代社会における時代性が反映されたシーンを切り取った写真表現として存在すると解釈したい。それ以降のアート系ファッション写真の論理的な背景は本書により明確に示されたのだと思う。
また彼の考え方はアート系のポートレート写真にも同様に適応されると考えてよいだろう。

“Appearances : Fashion Photography Since 1945”
(Martin Harrison著、1991年刊), 310 x 290 mm, 312 p

本書には、英国版(Jonathan Cape)、米国版(Rizzoli)、フランス版、またハード版、ペーパー版がある。ハード版は重くて分厚いので状態が悪いものが多い。古書市場の流通量は豊富。相場はハード版の普通状態で5000円~、良い状態だと1万円~。海外から取り寄せる場合は重い本なので送料が高くなるので要注意。
ファッション写真に興味ある人には、まず本書を買って自分好みの写真家を探すようにアドバイスをしている。

以下が収録写真家リスト。
Anthony Armstrong-Jones
Diane Arbus
Richard Avedon
David Bailey
Gian Paolo Barbieri
Lillian Bassman
Cecil Beaton
Guy Bourdin
Bill Brandt
Alexey Brodovitch
Erwin Blumenfeld
Alfa Castaldi
Cliford   Coffin
Ted Croner
Stephen Colhoun
Baron Adlf de Meyer
Louise Dahl-Wolfe
Bruce Davidson
Terrence Donovan
Richard Dormer
Arthur Elgort
Walker Evans
George Hoyningen-Huene
Robert Frank
Louis Faurer
Nan Goldin
Jean-Louis Gregoire
Leslie Gill
Ernst Haas
Bill Helburn
Hiro
Paul Himmel
Frank Horvat
Horst P.Horst
Constantin Joffe
Art Kane
William Klein
Genevieve Naylor
Norman Parkinson
Irving Penn
Harman Landshoff
Saul Leiter
Gerge Platt Lynes
Richard Litwin
Peter Lindbergh
Frances MacLaughlin-Gill
Robert Mapplethorpe
Kurt Markus
James Moore
Jean Moral
Sarah Moon
David Montgomery
Duane Michals
Martin Munkacsi
Helmut Newton
Gosta Peterson
Harri Peccinotti
John Rawlings
Paolo Roversi
Bob Richardson
Francesco Scavullo
Jerry Schatzberg
Jeanloup Sieff
Bill Silano
Melvin Sokolsky
Edward Steichen
Bert Stern
Cindy Sherman
Ronald Traeger
Deborah Turbeville
Chris-von Wangenheim
Bruce Weber
以上

アート系ファッション写真のフォトブック・ガイド(連載) (6)
“Shots of Style ” の紹介

美術館や公共機関で開催されたファッション写真の展覧会カタログの紹介を続けよう。今回は、ロンドンのケンジントンにあるヴィクトリア&アルバート美術館で1985年10月から1986年1月にかけて開催された“Shots of Style – Great Fashion Photographs Chosen by David Bailey” のカタログを取り上げる。

タイトル通り、英国人写真家デビット・ベイリー(1938-)が20世紀のファッション写真約174点をセレクションしている。
ベイリーは、60~70年代に活躍した英国人ファッション写真家。彼は、ブライアン・ダフィー、テレス・ドノヴァンとともに、60年代スウィンギング・ロンドンの偉大なイメージ・メーカーであるとともに、モデルやロック・ミュージシャンと同様のスター・フォトグラファーだった。60年代には、女優のカトリーヌ。ドヌーブと結婚していた時期もある。この3人はそれまで主流だったスタジオでのポートレート撮影を拒否し、ドキュメンタリー的なファッション写真で業界の基準を大きく変えた革新者だった。彼らこそは、いまでは当たり前のストリート・ファッション・フォトの先駆者たちだったのだ。
当時のザ・サンデー・タイムズ紙は彼らのことを「Terrible Trio(ひどい3人組)」、写真界の重鎮ノーマン・パーキンソンは「The Black Trinity(不吉な3人組)」呼んだそうだ。

ベイリーは、本書掲載のファッション写真の大まかな定義を“ファッション雑誌のエディトリアル・ページのために掲載された、服を1点かそれ以上を着ている女性の写真”としている。また前文では、以下のように記している。

“偉大なファッション写真は極めて稀だ。それは他の分野の写真と同様だ。いくつかの例外を除いて、ここに選ばれた写真は他の優れた分類の写真と同様のクオリティーを持っている。それは、ポートレートのアヴェドン、ルポルタージュのクライン、スティルライフのペンなど。本書で紹介している写真はすべての分野のアートを網羅しているともいえる。その意味で「ファッション写真」という言葉は当てはまらないだろう”

また、彼は35mmカメラとモータードライブの登場、一般の女性たちに多様なファッションが普及するようになったことがファッション写真を激変させた。ファッション写真が、時代の、姿勢、テクノロジー、セクシーさ、環境を反映させるメディアとなった、とも指摘している。
80年代くらいまでに、西洋先進国の中間層はかつてのタブーや因習、家族や他人の期待から自由になる。しかし複数の価値観が混在し、多くの人は何を着たらよいか、どのように暮らせばよいか、拠り所がわかりにくくなってしまう。そのような人たちはスタイルを求めるようになり、ファッション写真が世の中のスタイル構築に重要な役割を果たしたのだ。スタイルは明確な定義が難しい単語だが、物事がどのように見え、どのようになっているかということ。本書タイトルの“SHOTS OF STYLE”は、まさに新しい時代にスタイルを提供しているファッション写真という意味なのだ。
ベイリーの文章は、現在考えられている、20世紀におけるアートとしてのファッション写真の定義に近いといえるだろう。

掲載されている写真家は以下の通りとなる。
Diane Arbus、
Richard Avedon、
Gian Paolo Barbieri、
Lillian    Bassman、
Cecil Beaton、
Erwin Blumenfeld、
Louise Dahl-Wolfe、
Bruce Davidson、
Baron Adlf de Meyer、
Andre Durst、
Arthur Elgort、
Hans Faurer、
Toni Frissell、
Hiro、
Horst P. Horst、
Frank Horvat、
George Hoyningen-Huene、
William Klein、
Francois Kollar、
Germaine Krull、
Barry Lategan、
Peter Lindbergh、
Sarah Moon、
Jean Moral、
Martin Munkacsi、
Genevieve Naylor、
Helmut Newton、
Norman Parkinson、
Irving Penn、
Denis Piel、
John Rawlings、
Man Ray、
Paolo Roversi、
Jeanloup Sieff、
Melvin Sokolsky、
Edward Steichen、
Bert Stern、
Deborah  Turbeville、
Bruce Weber

前回に紹介した“The History of Fashion Photography”と比較してみよう。写真家数は、59名から39名に減少。新たに加わったのが14名、2冊で重複しているのが25名となる。前者は物理的にファッション写真を撮影している人を紹介している一方で、本書では、よりアート性(写真家の創造性)が重視されていると思われる。特に当時の若手を積極的にセレクション。マーティン・ハリソンはイントロダクションで、ヘルムート・ニュートン、ギイ・ブルダン、ブルース・ウェバーの登場で、コマーシャルとプライベートの作品2分法が成り立たなくなったと分析。彼はブルース・ウェバーを高く評価しており、彼の写真にはもはやファッション写真とパーソナル・ワークとの境界線がなくなっていると指摘している。
そして、“Fashion Photography of the 80s”の章で、ベイリーが当時の有力な若手として、ピーター・リンドバーク、デニス・ピール、パオロ・ロベルシの3名を上げていることを紹介、彼らが80年代以降のファッション写真の中心人物になると指摘している。ベイリーはこの時代に、既にリリアン・バスマン、アーサー・エルゴート、メルヴィン・ソコルスキーの仕事を評価し作品をセレクションしている。彼の優れたキュレーション力と先見性には感心させられる。

ハリソンのイントロダクションからは、80年代初期のファッション写真の状況が伝わってきて興味深い。写真展開催に際して、展示作品を集めるのに極めて苦労したようだ。当時はファッション写真の多くは作品だとは考えられていなく、雑誌編集部や写真家のもとにきちんと保存されていなかった。ファッション写真の多くは、雑誌掲載後は廃棄され、編集部や写真家の引っ越し時に処分されたという。
ルイス・ファーやボブ・リチャードソンの代表的ファッション写真は、当時には入手できずに展示を諦めたという。
またアート批評の世界でも、作り物のファッション写真は全く無視されていた事実にも触れられている。それが、アート界で、シンディー・シャーマン、ジョエル・ピーター・ウィトキン、ベルナール・フォーコンなどによる、作りこんで制作される写真作品が登場してきたことで、ファッション写真への偏見が徐々に減少していったそうだ。
ハリソンの本書にけるファッション写真の分析が、1991年に同じくヴィクトリア&アルバート美術館で開催された戦後のファッション写真に特化した展覧会“Appearances : Fashion Photography Since 1945” のキュレーションに発展していったと考えるが自然だろう。

(写真集紹介)
“Shots of Style – Great Fashion Photographs Chosen by David Bailey”
Victoria and Albert Museum、London、 1985年刊
ハードカバー(ペーパーバック)、サイズ 約33 X 24cm, 256 page.
Foreword : David Bailey
Introduction : Martin Harrison
約174点の図版を収録。

表紙はバロンド・メイヤーによる、米国化粧品ブランド“エリザベス・アーデン”用の1935年撮影の作品。本書にはハードカバーとペーパーバックがある。古書市場に流通しているのはほとんどがペーパーバック。前半がカラーで後半がモノクロの部分となる。モノクロは2色印刷と思われ、クオリティーは今一つ。本書はあくまでも資料だと考えたい。
古い本なので状態によって小売価格はかなりばらつきがある。一部にはカバーに変色が見られるものもある。状態が良好なものは75ドル(約8250円)程度から、ただし大判で割と重い本なので、海外から購入する場合は送料には注意してほしい。本自体は安くても、本体以上の送料がかかる場合がある。

アート系ファッション写真のフォトブック・ガイド(連載) (5)
“The History of Fashion Photography”の紹介

アート系ファッション写真の意味はよく誤解される。それは洋服の情報を提供している写真が単純にアート作品になるという意味ではない。ファッションの意味を辞書でひくと、流行の洋服以外に、時流、風潮のような幅広い意味を含んでいる。ここではファッションを幅広い意味で解釈した、時代性が反映された写真がアート作品になりうると理解してほしい。

この点の理解をより深めるために、私たちの生きている時代は、どのようにアーティストによって作品として提示されるかを考えてみよう。
いま主流の現代アート系の人は、時代にある様々な価値基準を頭で色々と考えてテーマとして抽出する。一方でアート系ファッション写真は、人々が心で感じる、言葉では表せない時代の気分や雰囲気をヴィジュアルで提示しているのだ。時代の価値を作品として提示するのは同じなのだが、一方は頭で考えるもの、他方は心で感じるものとなる。ファッション写真家の作品が過小評価されていたのは、多くの自由裁量が与えられるファッション誌のエディトリアル・ページの仕事やファッション的なパーソナルワークがある一方で、クライエントの意図が強く反映される、高額のギャラが支払われる広告写真が共存するからだ。欧米のアート界では、広告はアートと比べて一段低く見られる。日本とは全く逆の構図なのだ。
それは、リチャード・アヴェドンのような大物でも例外でなかったようだ。昨年、彼の長年のマネージメントを担当していたノーマ・スティーブンスらによって書かれた“Avedon: Something Personal”という一種の暴露本が発売された。それによると、アヴェドンが存命中に行った数々の美術館の展覧会に対して多くのアート評論家の評価は厳しいものだったそうだ。アヴェドンは、常にファッション写真家を超えてアーティスととしての評価を期待していた。しかし、レヴロン、シャネル、ヴェルサーチなどの高額ギャラの広告も手掛けるアヴェドンの作家性は、当時の正統なアート界には理解してもらえなかったのだ。

さて、ずっと過小評価されていたファッション写真にアート性が見いだされるきっかけの一つは、ニューヨーク州北東部ロチェスター市にあるジョージ・イーストマン・ハウスにあるInternational Museum of photography 1977625日~102日に開催され、その後に全米を巡回した“The History of Fashion Photography”展なのだ。
前回に美術館や公共機関で開催されたファッション写真の展覧会のカタログをリスト化した。今回はリストの最上位の、1979年に Alpine Book Co.Inc New Yorkより刊行された同展のカタログの内容を紹介しよう。

キュレーション担当はナンシー・ホール・ダンカン。最初の系統だったファッション写真の歴史を記した解説書だと同書紹介文には書かれている。表紙はサラ・ムーンのフレンチ・ヴォーグ1973年2月号掲載の作品。
“The Beginnings”“Pictrialism”“Modernism”“Realism”“Surrealism and Fantacy”“The Hiatus:World War II”“Avedon and Penn”“The Photographer-Hero”“The Seventies”の9章で構成されている。
イントロダクションには、ファッション写真の中身は洋服だけではなくそれを身にまとう人の態度や習慣を現している。それは文化と社会においての、人々の希望やテイストのコンパクトな索引のようなものです。それはモードの移り変わりを提示しますが、最高のファッション写真はただの流行を超越して、その時代が持つスタイルが反映されています。その時代の人々の自己イメージとともに、夢や欲望を反映していますと書かれている。
現在のアート系ファッション写真の解説とほぼ重なるといえる。しかし、当時はここで書かれている内容の意味は多くの人には理解されなかったと思う。

紹介されているのは以下の写真家。簡単なプロフィールも巻末に掲載されている。

“Avedon and Penn” page 144-145

James Abbe, Diane Arbus, Richard Avedon, David Bailey, Cecil Beaton, Bissonnais and Taponnier, Erwin Blumenfeld, Guy Bourdin, Anton Bruehl, Hugh Cecil, Henry Clarke, Clliford Coffin, Louise Dahl-Wolfe, Baron Adlf de Meyer, D’Ora, Andre Durst, Joel, Feder, Felix, John Fremch, Toni Frissell, Arnold Genthe, Hiro, Emil Otto Hoppe, Horst P. Horst, George Hoyningen-Huene, Andre Kertesz, Art Kane, William Klein, Francois Kollar, Herman Landshoff, Remie Lohse, George Platt Lynes, Henri Manuel, Frances McLaughlin-Gill, Harry Meerson, Lee Miller, Sarah Monn, Jean Moral, Martin Munkacsi, Arik Nepo, Helmut Newton, Norman Parkinson,  Irving Penn, Phillipe Pottier, John Rawlings, Man Ray, Charies Reutlinger, Bob Richardson, Peter Rose-Pulham, Egidio Scaioni, Seeberger Freres, Charies Sheeler, Jeanloup Sieff, Edward Steichen, Bert Stern, Maurice TRabard, Deborah Turbeville, Chris von Wangenheim

リストを一覧するに、今では名前を聞かない写真家の名前が数多く見られる。本書が書かれた70年代後半の時点では、写真自体がまだコレクションの対象としては目新しいカテゴリーだった。ましてや広告の匂いがするファッション写真がアート作品としての市場性を持つとは多くの人は考えていなかった。現在では、写真家が撮影時の時代性を的確に感じ取り、それが反映されたファッション写真が評価されるようになっている。たぶん当時のファッション写真家は、知名度や露出度などを基準に評価されていたのだと思う。

1979年に写真コレクションのガイドブック“Photographs : A Collector’s Guide”(Richard Blodgett著、Ballantine)が刊行されている。同書がファッション写真でコレクション候補として挙げているのは、Erwin Blumenfeld, Horst P. Horst, Richard Avedon, Irving Penn, George Platt Lynes, James Abbe
ちなみにペンの相場は7002000ドル、アヴェドンの8X10″プリントが300900ドル、ホルストが200600ドルと記載されている。ちなみに1979年のドル円の為替レートの平均は1ドル/219円。

写真家のセレクションはともかく、今に至るアート系ファッション写真の歴史はこの展覧会から始まったのは間違いない。資料的価値が高いので、この分野に興味ある人はぜひ同展のカタログを古書市場で探してみてほしい。なお本書は、ハードカヴァーとペーパーバックがあり、英語版とフランス語版がある。フランス語版は安いが読めない人は注意してほしい。流通量は多いが、ダストジャケットの状態が悪い場合がある。古書の相場は普通状態で10,000円~。

アート系ファッション写真のフォトブック・ガイド(連載) (4):ファッション写真の美術館展カタログの歴史

長きにわたり、ファッション写真は作り物のイメージなのでアート性は認められていなかった。しかし、70年代以降の欧米では写真は客観的真実を伝えるのではなく、写真家がパーソナルな視点で自己表現するメディアと認識されるようになる。ここで作りものの写真だから評価に値しないという考えが覆ったのだ。70年代後半から、美術館やギャラリーでのグループ展などが開催されるようになる。それらを通して優れたファッション写真は各時代の言葉に表せない人々のフィーリングを伝えるメディアだと認識されるようになる。欧米の美術館はアートの歴史で見逃されていた価値基準を再評価して、そこに新たなページを書き加えてきた。ドキュメントやファッション写真のアート性はその活動から見いだされた。
美術館がファッション写真独自の価値基準を認めると、プライマリー市場でギャラリーが作品を取り扱いコレクターが購入するようになる。そして時間経過とともにセカンダリー市場のオークションでも頻繁に売買されるようになり、相場が上昇した。30年前、ほとんどのコレクターが見向きもしなかったファッション写真は、いまでは市場の人気カテゴリーとなったのだ。

一番高価なのはリチャード・アヴェドンの代表作“Dovima with elephants”(1955)だろう。ディオールの黒いドレスのモデルと象の作品。誰でも一度は見たことがるだろう。2010年11月に、クリスティーズ・パリで1978年プリントの216.8×166.7cmサイズ作品が約115万ドルで落札された。当時は円高時で1ドル82.50円くらいだったので、円貨だと約9,503万円となる。
以上の流れを踏まえて、私がアート系のファッション写真のオリジナルプリントやフォトブックを選別する場合、以下の3点を判断基準にしている。今回の連載でも、それらに該当する写真家のフォトブックを取り上げていくことになる。
 
a.美術館などで開催されるグループ展に選出されている、

b.アート・ギャラリーでの個展開催や取り扱い実績、
c.アート写真オークションに作品が継続的に出品されている

アート系ファッション写真のフォトブックの刊行数は、美術館による再評価以前は非常に少なかった。リチャード・アヴェドンやアービング・ペンなど、作品プロジェクトのアート性が認められていたファッション写真家のモノグラフが中心だった。またそれ以外は、アートのカテゴリーというよりは、服飾のファッションのカテゴリーで取り扱われていた。90年代になり、ファッション写真のアート性が市場で広く認識されるようになると、上記のフォトブックのアート性の価値が見直される。見向きもされなかった本がレアブック扱いされるようになる。同時に過去に活躍した写真家の作品が見直されて再評価されるようになり、新たにフォトブックも刊行されるようになるのだ。
今では有名なギイ・ブルダン、リリアン・バスマン、ソール・ライターなどもここに含まれる。いま刊行されている多くのファッション系フォトブックは、90年代以降に再評価された写真家によるものだ。分類すると以下のようになる。

(1)美術館で開催されたファッション写真の展覧会カタログ
(2)ファッション写真のアート性が認識される以前の本
(3)90年代以降に再評価された写真家の本

すべては、美術館で開催されたファッション写真のグループ展での写真家たちの評価から始まる。これらの展示に作品が複数回選出された人がコレクター間で人気作家となる。実際のフォトブック紹介にあたって、個別の写真家のモノグラフよりも、まず20世紀に刊行された美術館展カタログの紹介から始めるのが適当だと考えた。(ちなみに21世紀のファッション写真の展覧会カタログは別の機会に紹介する。)以下に、私が選んだカタログのリストを上げておく。次回以降に個別に紹介していきたい。

“The History of Fashion Photography”Nancy Hall-Duncan, Alpine Book Co.Inc New York, 1979
“Shots of Style – Great Fashion Photographs Chosen by David Bailey” Vivtria & Albert Museum, London, 1985
“Images of Illusion” The fashion Group of St.Louis, 1989
“Appearances : Fashion Photography Since 1945” Martin Harrison, Jonathan Cape, London, 1991
“VANITES – PHOTOGRAPHIES DE MODE DES XIXe ET XXe SIECLES” CENTRE NATIONALDE LA PHOTOGRAPHIE, Paris,1993

もしかしたら、私が把握できていない美術館展カタログもあるかもしれない。資料を持っている人はぜひ情報を提供してほしい。

アート系ファッション写真の
フォトブック・ガイド(連載3)
ファッション雑誌の中だけではない
幅広い分野にあるアート系ファッション写真

前回から人気の高いアート系ファッション写真のフォトブックのガイドが出版されていない理由を考えてきた。
ファッション写真自体の評価の難しさも、いままでにガイドが制作されなかった背景にあると考えている。ここからはやや小難しい解説になるが、どうかご容赦いただきたい。
つまり、ファッション写真には、単に洋服の情報を伝えるだけのものと、ファッションが成立していた時代の気分や雰囲気を伝える、アート系と呼べるものが混在しているのだ。たとえば現代アート作品の場合、写真家は時代が抱える問題点をテーマとして見つけ出し、それに対する考えをコンセプトとして提示する。アート系ファッション写真は、頭でテーマを考えるのではなく、各時代を特徴づける言葉にできないフィーリングを写真家が感じとり、ヴィジュアルで表現することになる。分かり難いのは、その時代に生きる人が共有する未来の夢や価値基準の存在が前提条件となることだろう。アート系ファッション写真は、それらが反映された時代性を写真家が抽出しているわけだ。
例えばヘルムート・ニュートンは、早い時期から、男性目線ではない自立した女性を意識した作品を提示してきたのが評価につながっている。見る側にこの部分の明確な認識がないとファッション写真の区別や評価はできない。

時代性が反映された写真という前提に立つと、アート系ファッション写真の定義は従来のステレオタイプ的なものよりかなり広範囲になってくる。

80年代を代表する米国人写真家ブルース・ウェバーは、”私は新聞に掲載されている消防士の写真や、30年~50年代のパリのドキュメントやストリート写真にファッション性を感じる”と”Hotel Room with a View”(Smithsonian Institution Press, 1992年刊)掲載のインタビューで語っている。
“Hotel Room with a View”(Smithsonian Institution Press,  1992年刊)

また、”被写体となる人間自身が最も重要で、もし彼らが自らのライフスタイルを表現して、とてもパーソナルな何かを着ていれば、私にとってそれらの写真は人生の何かを伝えている”とも発言。評論家のマーティン・ハリソンは、ウェーバーはキャリアを通して、確信犯でファッション写真を次第にブルース・ウェバーの写真に展開させてきた。と評価している。

ハリソンは彼の著書”Appearances”でヴォーグ誌のアート・ディレクターのアレクサンダー・リーバーマンが理想としているファッション写真を紹介している。それは、最高のセンスを持つアマチュアで、写真家の存在を感じられない写真、だとしている。1940年代に新人編集者にそれに当てはまる、アーティストの自己表現とファッション情報の提供がバランスしている2枚の写真を紹介している。

 

最初の1枚は、エドワード・スタイケンによるヴォーグ誌1927年5月号に掲載されたマリオン・モアハウス(Marion Morehouse)をモデルとした写真。
“Appearances”page 47 掲載のエドワード・スタイケン作品 
リーバーマンは、その写真は流行りのシェルイ(Cheruit)のドレスを明確に撮影しているものの、女性に敬意を表し彼女の最高の魅力的な瞬間を表現している、としている。ハリソンは、この写真は1920年代に欧米で流行した革新的なフラッパーの要素を従来の婦人像と融合させている、と評価している。
もう1枚はファッションとは縁遠いウィーカー・エバンスがキューバのストリートで1923年に撮影した白いスーツを着た男性のドキュメント写真。
“Appearances”page 46 掲載のウォーカー・エバンス作品

彼は”これは明らかにファッション写真ではないが、私はこれこそが根源的なスタイルのステーツメントだ”と語っていると引用されている。これも上記のウェバーと同じ意味だ。本稿の中でセレクションしていくアート系ファッション写真も同様の基準で行われることになる。つまり、雑誌用などでファッション写真として制作されたもの以外にも、時代性が反映されたドキュメント系、ストリート系、ポートレート系が含まれることになる。

次回は時代で移ろうアート系ファッション写真の前提条件に触れる予定だ。もう少しで具体的なフォトブックの紹介となる。

アート系ファッション写真の
フォトブック・ガイド(連載-2)
玉石混交のファッション系の写真集

いままでに刊行されたフォトブック・ガイドはだいたい次のように分類できる。
著者の個人的な好み、刊行年代別、国や都市や地域別、カテゴリー別、単独コレクションの紹介などだ。最近はマグナム・フォトの写真家だけのフォトブック・ガイド“MAGNUM PHOTOBOOK”(Phaidon Press、2016年刊)も発売されている。
“MAGNUM PHOTOBOOK”(Phaidon Press、2016年刊)

そのなかで、種類が少ないのがカテゴリー別だろう。ヌード系をまとめた“Book of Nude”(Alessandro Bertolotti、2007年刊)があるくらいだ。

“Book of Nude” (Alessandro  Bertolotti、2007年刊)私が個人的に発刊を待ち望んでいるのが、アート系ファッションやポートレート分野のフォトブック・ガイドだ。ファッション写真自体だけなら、写真家、歴史、ヴォーグ/ハーパース・バザー/ザ・フェイスなどの掲載された雑誌メディア、またブランドやデザイナー、ファッション・エディターごとにまとめられて刊行されている。しかし、写真家のモノグラフの包括的なガイドブックは私の知る限り存在していない。

 この分野は、アート写真コレクターだけでなく、ファッション業界の人にもアピールできる。出版すればかなりの売り上げが予想できると版元も考えるはず。不思議に感じたので、いくつかその理由を考えてみた。
一番単純なのは、各時代を代表するファッション写真家のキャリアを回顧したフォトブックのガイドを制作することだろう。しかし、それだとすでに引退したり亡くなった人が対象になり、本の数があまり多くないのだ。ファッション写真のアート性が認められたのが比較的最近であることも影響している。それ以前に活躍した人の再評価は現在進行形なのだ。現役のファッション写真家の場合は、キャリアの途中でそれまでの仕事を回顧するケースは稀だと思われる。

また現役写真家の本の場合、かなりの数の自費出版が含まれているのが状況を複雑化していると思う。広告で稼いだ写真家が経費を思う存分に使って自分の広告写真のアザー・ショットやヌード、スナップ、風景などのプライベート写真を大手出版社を通して写真集化する場合が多く見受けられるのだ。それらは、仕事上のクライエントや広告代理店へのアピールが主目的で制作されるのだが、時に豪華本で、有名出版社から刊行される。広告業界で知名度が高いファッション写真家も含まれる。表面上は自費出版かどうかが非常にわかり難い。

“Understanding Photobooks” (A Focal Press Book、2017年刊)

以前のブログで紹介したヨーグ・コルバーグ(Jorg Colberg、1968-)著の、フォトブック解説書“Understanding Photobooks(The Form And Content of the Photographic Book) ”によると、いまほとんどのフォトブック出版では写真家が資金を出しているという。それゆえ、フォトブックを出している出版社からも、ファッション写真家の写真を本形式にした、自費出版本は刊行されているのだ。厳しい経営環境の中、有名出版社でも長い物には巻かれよになってしまうのは理解できる。またコールバークの本では、フォトブック制作では写真家は独裁者ではなく、多くの関係者間のコーディネーターの役割を果たすべきだとしている。しかし、上記のファッション系の本では、写真家が独裁者となりすべて自分の思い通りにする場合が多い。残念ながらアマチュア写真家の本作りと同じ構図になっているのだ。

それらはもちろんフォトブックではなく、ファッション写真家による写真集形式の作品カタログとなる。現存の写真家なので資料的な価値もない。
このように制作意図が全く違うファッション写真家の写真集が世の中には混在している。外見は豪華なのだが、内容が伴わない写真集が非常に多いのだ。膨大な数のなかから、アート系のフォトブックを区別するのはかなり難しい作業になるのだ。ファッション写真家による作品カタログのガイドブックをわざわざ制作しても、それは職業別の写真家ガイドでしかない。アートに興味を持つコレクターは全く面白味を持たないだろう。これこそがアート系ファッション写真のフォトブック・ガイド制作を考えるときに真っ先に直面する大問題なのだ。
アート系を分別するには、すべての刊行物を購入して内容を吟味するのが理想だ。しかし昨今の出版物の洪水のなかでは費用的、時間的に実際的ではない。私が判断する際に参考にしているのは、刊行後の古書市場での相場動向だ。アート系ファッション写真のフォトブックはプレミアムが付くが、それ以外は当初販売価格以下で売られている場合が多いのだ。また洋書店のバーゲンセールで売られている場合も多くみられる。ファッション雑誌の売り上げが落ちているように、ファッションのカタログ的な写真集も消費者になかなか買ってもらえないのだ。

次回の第3回では、アート系ファッション写真の評価基準を少しばかり小難しく解説する。

ファッション写真を愛する人へ
新分野のフォトブック・ガイド (連載-1)いよいよ連載開始!

いままでになかった、ファッション系フォトブックのガイドブック。これから個人的に不定期の連載形式でまとめていきたい。最初の数回は、フォトブックやアートとしてのファッション写真の前提条件の確認を行っていく予定だ。たぶん完成までにはすごく長い道のりになると思われる。興味ある人はどうかお付き合いください。
(1)はじめに
まず最初に、フォトブックがどのような経緯でアート写真コレクションの一部になったかを見てみよう。アート系ファッション写真のフォトブックはその延長線上に登場することになる。21世紀になって、写真集のカテゴリーの一つであるフォトブックのガイドブックが相次いで発売された。念のために確認しておくが、フォトブックは写真家が本のフォーマットを利用して自己表現しているものを指す。世の中に氾濫している、写真を本形式にまとめたものとは別物になる。
いままでに、
“The Book of 101books”(Andrew Roth、 2001年刊)、
“The Open Book”(Hasselblad Center、2004年刊)、
“The Photobook : A History Volume 1 & 2 & 3”(Martin Parr &Gerry Badger、2004、2005、2014年刊)
が相次いで発売され、2009年には金子隆一氏による日本のフォトブックのガイドブック“Japanese Photobooks of the 1960s &’70s”が発売。私自身も“アート写真ベストセレクション101 2001-2014″(玄光社、2014年刊)を出版させてもらっている。

当時のアート市場の状況にも触れておこう。経済は2000年初めのITバブル崩壊から立ち直り、2008年ごろま景気拡大が続いていた。好況を背景にアート・ブームが起き、アート写真相場も同時に上昇していた。そのような環境下で、過去の出版物の系統だった情報と評価を提供するガイドブックの登場が、フォトブック・コレクションを後押しした。比較的割安だったフォトブックが、最後に残された未開拓のアート・コレクション分野としてにわかに注目されたのだ。

いままであまり知られていなかった60年代~70年代の日本のフォトブックも欧米に紹介され、ミニブームが到来した。浮世絵の伝統を持つ日本では、オリジナルプリントではなくフォトブックが写真の自己表現で、日本人写真家のヴィンテージ・プリントに該当するのが初版フォトブックだと解釈されるようになる。神田神保町の写真集専門店には海外からの引き合いが増大。ガイドブック掲載の日本人写真家の古書相場は急騰した。
いままで、この分野はスワン・オークション・ギャラリーズなどの中堅オークション業者が写真作品の一部として取り扱っていた。ブーム到来で大手オークション・ハウスもフォトブックに注目した。クリスティーズ・ロンドンは2006年に“Rare Photobooks”の単独カテゴリーのオークションを開催。ついに2008年4月には、クリスティーズ・ニューヨークで200冊のフォトブックの“Fine Photobook”セールが行われ、260万ドル(@102.685/約2.67億円)の売り上げを達成している。残念ながら、その後の2008年9月に起きたリーマン・ショックの影響で市場は急速に縮小。単独カテゴリーでのセールは2010年5月のクリスティーズ・ロンドンを最後に行われていない。現在では、レア・フォトブックは低価格帯アート写真を取り扱う、中小業者が取り扱っている。
Christie’s London 2006″Rare Photobooks”
Christie’s NY 2008 “Fine  Photobook”

2017年には、スワンが春に“Images and Objects: Photographs and Photobooks”、秋に“Art & Storytelling: Photographs & Photobooks”を開催している。大ブームは終焉したが、レア・フォトブックの地位はアート写真の一部のカテゴリーとして確立されたといえるだろう。

次回は、フォトブックガイドの分類と、アート系ファッション写真の評価基準を解説していきたい。