ノーマン・パーキンソン 写真展 “Norman Parkinson: Always in Fashion” ブリッツ次回展は10月11日スタート!

ブリッツ・ギャラリーの次回展は、20世紀英国を代表する写真家ノーマン・パーキンソン(1913 – 1990)の日本初個展 「 Always in Fashion 」となる。

ノーマン・パーキンソンは、ファッション/ポートレート分野において、20世紀でもっとも偉大で、影響力を持つ写真家の一人だと言われている。ファッション写真好きの人なら必ず彼の代表作品を見たことがあるはずだと思う。
ファッション写真の歴史を紹介する写真集には、間違いなくパーキンソン作品は収録されている。今回の展示作品に触れて、はじめて見慣れた写真がパーキンソン撮影だったと気付く人も多いだろう。

彼のキャリアを簡単に紹介しよう。1931年、ウェストミンスター・スクールを18歳で卒業。法廷カメラマンの見習いで写真の基礎を学んだのち、1934年にスタジオを開設。1935年に「ハ―パース・バザー」誌に雇われ、1940年まで同誌英国版の仕事を行っている。
彼の写真はキャリア初期から革新的といわれていた。パーキンソンは、スタジオから外に出て、ストリートや、遠隔地のエキゾチックな場所での撮影を最初に行った写真家の一人なのだ。モデルの存在にリアリティーを感じさせる彼の撮影方法は「ドキュメンタリー・ファッション」と呼ばれ注目される。
戦後は、「ヴォーグ」(1945-1960)、「クィーン」(1960-1964)などの世界的なファッション誌で仕事を手掛け、その後は「タウン&カウントリー」などの仕事を行っている。
彼の写真は、ヴィジュアル面から50年代パリのニュー・ルックや60年代のスウィンギング・ロンドン時代の雰囲気作りに関わる。「ファッション写真の父 」とも呼ばれ、その後に登場する若手写真家の撮影スタイルに多大な影響を与えている。英国人写真家では、60年代に登場した、デヴィッド・ベイリー、テレンス・ドノヴァン、ブライアン・ダフィーが有名。パーキンソンの写真には、彼ら3人の特徴だった、勢い、即興性、動きと変化がすでに取り込まれていたのだ。

今回の日本初個展では、1938年から1982年までに撮影されたモノクロ/カラーの代表作約25点を紹介する。
リサ・フォンサグリーヴスやマリー=エレーヌ・アルノーなどがモデルを務める有名ファッション写真から、オードリー・ヘップバーン、ジェリー・ホール、ザ・ビートルズ、デヴィッド・ボウイなどの珠玉のポートレートも含まれる。
すべてが作家の意思を受け継いで運営されているノーマン・パーキンンソン・アーカイブスから提供されるエディション付きエステート・プリント作品。
また2019年夏に刊行された「Norman Parkinson: Always in Fashion」(ACC刊)や、英国から輸入したポストカード類も販売される。

実は本展にはもう一つの見どころがある。ノーマン・パーキンソンのファッション・ポートレート写真と共に活躍した写真家の作品を展示する「華麗なるファッション写真の世界」も同時開催する。リチャード・アヴェドン、ジャンル―・シーフ、メルヴィン・ソコルスキー、ホルスト、ブライアン・ダフィーなどの作品展示を予定している。展示作品数はもう少し増えるかもしれない。
どうか楽しみにしていてほしい。

(開催情報)
「ノーマン・パーキンソン 写真展 」
(オールウェイズ・イン・ファッション)
2019年 10月11日(金)~12月22日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料

Blitz Gallery

「Blitz Collection: Landscapes」
(ブリッツ・コレクション展:風景写真)
見どころの解説

本展では、アンセル・アダムス、マイケル・デウィック、テリ・ワイフェンバック、ウィリアム・ワイリー、岡田紅陽、伊藤雅浩、ファウンド・フォトなどを多数展示している。点数が多いメイン展示は、アンセル・アダムスと岡田紅陽になる。

アンセル・アダムス作品の展示風景

アンセル・アダムスは写真独自のアート表現を追求。光の状態をフィルムと印画紙に可能な限り精緻に再現するゾーン・システムという独自技法を開発し、自分のヴィジョンをモノクロ写真で再現した。プリントサイズ、感度など、色々な制約があったアナログ銀塩写真時代に、写真表現の可能性拡大に挑戦しているのだ。彼の技法は、アナログによるフォトショップのようだ、などともいわれている。来場者の中からは、彼の写真を見るとまるで視力が良くなったかのように感じる、という意見も聞かれた。
作家性が再評価されたことで、20世紀写真の中でも彼の作品価値は極めて安定している。

“ブリッツ・コレクション展:風景写真”の展示風景

岡田紅陽は、富士山をライフワークのテーマとして約60年以上に渡り撮影してきた。最初は富士の秀麗な姿やフォルムを追求。しかし後期になると次第に自分の精神状態や心情を反映させた富士を撮影するようになる。
今回は、当時のヴィンテージ・フレームで全作品を展示してみた。すべてが絵画用と思われる装飾的な額。写真がアートと考えられていなかった戦後昭和時代の展示方法を提示するという意図もある。金色の飾りやマット表面に布が貼られていたりする。まさに白いブックマットとシンプルなフレームを利用するのと対極の展示方。シンプルな展示の方がモノクロの富士の写真を引き立てるという感想もあるだろう。日本では写真はアート作品だとはあまり考えられていない。したがって岡田紅陽作品も作家性の見立てがあまり行われていない。個人的には過小評価だと考えている。

ウィリアム・ワイリー「The Anatomy of Trees」の展示風景

ウィリアム・ワイリーの「The Anatomy of Trees」では、コロラドの高地平原地帯の魅力的な光で、単独で生育している大木をモノクロで撮影。それぞれの木々の枝ぶりなどの表情を人間の人生に重ね合わせて表現している。8X10″の大判カメラで撮影し、インクジェットで制作。タイトルの和訳は「木々の解剖学」となる。

伊藤雅浩「陽はまた昇る / The Sun Also Rises」東日本大震災(2011/3/11)

伊藤雅浩「陽はまた昇る / The Sun Also Rises」は、21世紀の現代アート的視点で制作された風景作品としてセレクションした。本シリーズの特徴はカメラを使用しないで作品が制作されている点だろう。黒色の背景に分布している様々な大きさのカラフルなサークルは実は日本地図と重なる。伊藤は視覚で把握できない地震の作品化に挑戦。巨大地震の発生日を中心とし、前後6か月間に発生した震度1以上の地震を深度ごとに分類し、さらに各記号の直径を震度で表現し,地震規模と地震分布を可視化している。震源データは気象庁ウェブページ・震度データベースより引用。東日本大震災(2011/3/11)、阪神淡路大震災(1995/01/17)、熊本地震(2016/04/14)など、全9作品を展示。
彼の新作は、地球規模の環境を意識して制作された「植生図シリーズ」。これも21世紀の風景写真として秀逸だ。今回は展示できなかったが、シートで見せることは可能。興味ある人は声をかけてほしい。

今回のコレクション展の見どころは、様々な種類の写真制作方法が一堂に比較して見られることだ。モノクロ写真では、20世紀初頭フランスのファウンドフォト、ゾーンシステムのアンセル・アダムス、岡田紅陽の銀が浮き上がったヴィンテージ写真、正統派のマイケル・デゥイックによる21世紀の銀塩写真、フィルムで撮影してインクジェットで制作されたウィリアム・ワイリーのデジタル・アーカイヴァル・プリントまでが見比べられる。
カラーでは、テリ・ワイフェンバックの、アナログ時代のタイプCプリントから、デジタルカメラによるデジタルCプリントまでを展示。伊藤雅浩は、カメラを使用しないでデータを操作して重いテーマだが美しい抽象作品を作り上げている。

本展からは、プリント制作手法自体に優劣があるのではなく、それぞれの表現が独自の特徴を持っている事実が明確にわかってくる。またデジタル時代が到来してクオリティー自体の追求が困難で、あまり意味を持たない点も浮かび上がってくる。結局、そのうえでアーティスト/写真家が何を写真で表現して伝えたいかが問われるということなのだ。

本コレクション展は、9月29日まで開催。ギャラリーは、今週末の3連休中も23日(秋分の日)を含みオープン。火、水曜が休廊となる。写真での自己表現を考えている人や、アート写真のコレクションを考えている人はぜひ見に来てほしい。

「Blitz Collection : Landscapes」
ブリッツ・ギャラリー

ブリッツ2019年秋の予定
風景写真コレクション展/
ノーマン・パーキンソン展

2019年秋のギャラリーの展示スケジュールをお伝えする。

9月は連休中もオープンして珠玉の風景写真を紹介、10月以降はファッション写真の有名作の展示を行う予定。

(1)「Blitz Collection: Landscapes (ブリッツ・コレクション展:風景写真)」

ⓒ Ansel Adams “Northern California Coast Redwoods, ca.1960″ from Blitz gallery collection

ブリッツ・ギャラリーは、9月12日~29日にかけて、自然風景を撮影した写真作品のグループ展を開催する。
なお本展では、ギャラリーは9月16日(敬老の日)、23日(秋分の日)もオープン。火、水曜が休廊となる。

ランドスケープ写真は、写真が誕生した19世紀から現代まで、数多くの写真家が取り組んできたポピュラーなテーマ。初期段階では美しい自然のシーンを記録し多くの人々に伝える作品が中心だった。アンセル・アダムスは写真独自のアート性を追求。光の状態をフィルムと印画紙に可能な限り精緻に再現するゾーン・システムという独自技法を開発し、自分のヴィジョンをモダンなモノクロ写真で表現した。
岡田紅陽は、富士山をライフワークのテーマとして約60年以上に渡り撮影してきた。最初は富士の秀麗な姿やフォルムを追求します。しかし後期になると次第に自分の精神状態や心情を反映させた富士を撮影するようになる。
21世紀は現代アートが市場を席巻している、写真家たちはパーソナルな視点とアート志向を強く意識し、みずからの世界観やアイデアを表現する一環として風景を撮影している。また21世紀には、地球規模の環境破壊や気候変動などに強い問題意識を持ったアーティストによる風景作品が数多く見られる。もはや風景写真はアマチュア写真家が好むものにとどまらず、現代アートの最先端のジャンルとよべる。

今回のコレクション展では、ブリッツの膨大な収蔵写真作品の中から、クラシック作品から21世紀の現代アート系作品まで、約25点をセレクションして展示。本展をきっかけに、風景写真の世界に新たな魅力を発見してもらえば幸いだ。

(展示予定アーティスト)
アンセル・アダムス、マイケル・デゥイック、テリ・ワイフェンバック、ウィリアム・ワイリー、岡田紅陽、伊藤雅浩、ファウンド・フォトなど多数を展示予定。

(2)「Norman Parkinson : Always in Fashion 」
(ノーマン・パーキンソン展)

From the roof of the Condé Nast building on Lexington Avenue. With a view of the Chrysler and Empire State buildings, New York, American Vogue, 15 October 1949. Iconic Images/The Norman Parkinson Archive

10月11日~12月22日にかけては、20世紀英国を代表する写真家ノーマン・パーキンソン(1913 – 1990)の日本初個展を開催する。
こちらは通常通り、水曜~日曜日の営業、月/火曜日が休廊となる。

パーキンソンは、ファッション/ポートレート分野において、20世紀でもっとも偉大で、影響力を持つ写真家の一人だと言われている。彼の写真は、「ハ―パース・バザー」で活躍していた戦前のキャリア初期から革新的だといわれていた。当時のファッション写真は、光やモデルのポーズを完全にコントロール可能な写真スタジオで行われていた。パーキンソンは、モデルの存在にリアリティーを感じるストリートや、遠隔地のエキゾチックな場所での撮影を最初に行った写真家の一人。彼の写真では、モデルたちは自然かつダイナミックな動きがあり、時にユーモアのセンスを持って表現されていた。彼の方法論は「ドキュメンタリー・ファッション」と呼ばれ注目される。戦後は、「ヴォーグ」(1945-1960)、「クィーン」(1960-1964)などのファッション誌で仕事を手掛け、1964年以降はフリーランスで「タウン&カウントリー」などの仕事を行っています。
今回の日本での初個展では、1938年から1982年までに撮影されたモノクロ/カラーの代表作約25点を紹介。リサ・フォンサグリーヴスやマリー=エレーヌ・アルノーなどがモデルを務める有名ファッション写真から、オードリー・ヘップバーン、ジェリー・ホール、ザ・ビートルズ、デヴィッド・ボウイなどの珠玉のポートレートも含まれる。
すべてが作家の意思を受け継いで運営されているノーマン・パーキンンソン・アーカイブスから提供されるエディション付きエステート・プリント作品。
また2019年夏に刊行された“Norman Parkinson: Always in Fashion”(ACC刊)や、ポストカードも販売する。

(同時開催)「華麗なるファッション写真の世界」

ノーマン・パーキンソンのファッション・ポートレート写真と共に、彼と同時期に活躍した写真家、リチャード・アヴェドン、ジャンル―・シーフ、メルヴィン・ソコルスキー、ホルスト、ブライアン・ダフィーなどの作品の展示を予定している。

ご来廊をお待ちしています!

“ROCK ICONS 2”
(鋤田正義/グイード・ハラリ/フレンズ)
ブリッツ次回展が4月12日スタート!

ブリッツ・ギャラリーの次回展は、昨年に開催して好評だった、鋤田正義とグイード・ハラリによる20世紀ロックの伝説的ミュージシャンたちのポートレート写真展の第2弾、“ROCK ICONS 2(ロック・アイコンズ 2) / SUKITA X HARARI X FRIENDS”となる。日本人の鋤田とイタリア人のハラリは、70年代から90年代までの20世紀ロック黄金期のミュージシャンを世界中で撮影し続けてきた。二人は、撮影スタイルは違うものの、お互いの仕事をリスペクトしあう友人でもある。ハラリは、熱心なロックファンが多い日本での自作紹介を長年にわたり夢見ていた。昨年の“ROCK ICONS / SUKITA X HARARI”展は、ハラリの希望に鋤田が答えることで実現した。

“ROCK ICONS 2”では、二人の日本での未発表作品を中心に紹介する。また今回は、ハラリが自身のイタリアのギャラリーでプロデュースしている写真家のフランク・ステファンコ、メリ・シル、ロバート・ウィテカー、アート・ケイン、カーロ・マサリーニの作品も紹介する。いずれも日本初公開の有名ミュージシャンの珠玉のポートレート作品となる。
展示される多くの作品は、ミュージシャンとの深い信頼関係の中から生まれたコラボレーション作品。それらは単なるスナップではなく、コレクションの対象になっているアート系ポートレート写真となる。

本展で紹介されるミュージシャンは、鋤田正義が、デヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン、デヴィッド・シルヴィアン、イギー・ポップ、YMO (イエロー・マジック・オーケストラ)、忌野清志郎など。グイード・ハラリが、ピーター・ガブリエル、ボブ・ディラン、トム・ウェイツ、ルー・リード、ローリー・アンダーソン、パティー・スミス、ケイト・ブッシュ、ロバート・スミス(ザ・キュアー)、フランク・ザッパなど。アート・ケインは、クリーム、ボブ・ディラン、ザ・ローリングストーンズ、ザ・フー、ジム・モリソン。フランク・ステファンコは、ブルース・スプリングスティーン。メリ・シルは、ジェフ・バックリィ。ロバート・ウィテカーは、ザ・ビートルズ。カーロ・マサリーニはフレディー・マーキュリーなどとなる。
本展では、モノクロ・カラーのよる様々なサイズの約60点を展示する。会期途中に一部作品の入れ替えも行う予定。

今回もほとんどの作品が販売される。小さいシート・サイズの8X10″(約20X25cm)、エディション100の作品なら、あの鋤田正義でもまだ2万円台から購入可能なものがある。超有名作の、ボウイの阪急電車、渋谷公会堂のライブの作品でも、まだ約20万円~購入可能だ。

最近、20世紀写真のアート写真市場は動きが鈍くなっている。その中で人気が衰えないのが、ミュージシャンを含むアート系ポートレート写真だ。今回はその分野の写真作品を数多く取り揃えることができた。たぶんブリッツにおける最高枚数の作品展示だと思う。
好評だったグイード・ハラリのデザインによる写真展カタログも会場で限定数販売する。

“ROCK ICONS 2 / SUKITA X HARARI X FRIENDS”
鋤田 正義 / グイード・ハラリ / フレンズ
2019年4月12日(木)~ 7月14日(日)
1:00PM~6:00PM
休廊 月・火曜日/入場無料

ザ・プリンシズ・トラスト・コンサートの集合写真
テリー・オニールが紡ぎだす80年代後半の英国

1月に掲載したテリー・オニール写真展の見どころで、テリー・オニールがライブ・エイドの集合写真を撮影していたと紹介した。彼の写真集“Terry O’Neill’s Rock ‘n’ Roll Album” (2014年、ACC Editions刊)には、ミュージシャン17名のカラー写真を収録。椅子に座ったティナ・タナ―を中心に、ポール・マッカトニー、エルトン・ジョン、ロッド・スチュアート、エリック・クラプトン、フィル・コリンズなどが写っている。記載されているタイトルは“Musicians involved in Live Aid, 1985”となっている。2枚目は、“Terry O’Neill: The A-z of Fame”(2013年、ACC Editions刊)に“Princes Diana and Live Aid”というタイトルでモノクロの集合写真が収録されている。

最近、非常に当時の事情に詳しい専門家のお客様からの指摘で、それらの写真は同じチャリティー・コンサートではあるものの、ザ・プリンシズ・トラストの支援イベントであることが判明した。写真集の記載内容は間違いだった。これは英国のチャールス皇太子が1976年に失業者など弱い立場の若者世代の支援目的のために設立した財団。発足したのは、ちょうど経済が悪化して失業者が増加し、いわゆる英国病に苦しんでいた時代だ。写真集のキャプションには、“ライブエイド”との記載があり、参加者がライブエイドとかなり重なることから信じてしまった。間違った情報を提供したことを心よりお詫びしたい。

正確には、カラーの方が1986年6月20日、ロンドンのウェンブリー・アリーナで行われた、ザ・プリンシズ・トラスト10周年記念コンサートでの集合写真。その模様はLP、CD化されている。ティナ・ターナー、エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、ロッド・スチュアート、エリック・クラプトン、ミッジ・ユーロ、ハワード・ジョーンズ、レベル42、ポール・ヤングなどが参加している。

モノクロの方は1988年6月5~6日に同じくザ・プリンシズ・トラストのもとに集結したミュージシャンによるロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールでのチャリティー・コンサートでの集合写真となる。参加者は、ビージーズ、エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、レオナード・コーエン、ジョー・コッカー、マーク・ノップラー、ピーター・ガブリエル、フィル・コリンズ、トゥパウ、エリック・クラプトン、ミッジ・ユーロ、ハワード・ジョーンズ、リック・アストリーなど。ネットを調べたら、こちらは映像がレイザーディスクで発売されていた。

同じ記事で、1985年の「ライヴ・エイド」に行ったものの、クイーンやデヴィッド・ボウイを撮った写真が見つからなかったと書いた。しかし、彼らを撮っていないわけがないので、過去の写真を今一度調べてみた。
やはり、以前紹介したのと別のフィルムで撮影していたことを発見した。登場リストによるとクイーンは6時40分、デヴィッド・ボウイは7時20分の出演予定となっている。夏場のロンドンは日没がかなり遅い。しかし、6時を過ぎるとさすがに日が陰り、ステージは照明がメインのライティングになった。当時のカメラはもちろんアナログで、それも感度の低いデイライト用のコダックのカラー・フィルムを使用して望遠レンズでの撮影だった。クィーンの時はまだ回りが明るかったので、フレディー・マーキュリーの姿は確認できる。

ピアノを弾いている写真は、たぶんボヘミアン・ラプソディーの時だと思う。

しかし、その後のボウイはもうかなり暗いなかでの動きのあるパフォーマンスだった。 存在は確認できるがかなりブレ・ボケになっている。

その他、スティング、ポール・ヤングの姿も撮影されていた。

80年代初め、クラッシュのブリクストンでのコンサートに行った。当時の全員立ち見の会場内には、社会への不満の鬱積とそれを音楽で発散しようという人たちのエネルギーが充満していた。
しかし80年代半ば以降のチャリティーコンサート、例えば私の行ったライブエイドなどでの英国人の熱狂は、パンクロックのコンサートとは全く違っていた。ちょうど当時の英国は、北海油田からの原油産出による財政赤字の削減効果が出始め、英国病克服を目指すサッチャー首相による新自由主義的な各種政策の効果が出始めていた時期だった。経済状況が急激に改善したわけではなかったが、人々が未来に対して希望を持ち始めていた。実際に90年代以降の英国は、長期にわたり経済成長を継続していくことになる。経済状況の推移を聞いてもあまりピンとこないが、時代ごとのロック・ポップ音楽の状況に置き換えてみると実感がわいてくる。
そしてテリー・オニールの50年以上に渡る写真作品も、そのような音楽とともにあった、各時代の気分や雰囲気が反映されているのだ。撮影された時代を生きた人ならば、写真から音楽が蘇り、当時の記憶が思い出されるのではないか。私はそれこそが、彼の写真集人気が非常に高く、比較的高額なのに売れている理由ではなかと思う。

テリー・オニール 写真展
“Terry O’Neill: Rare and Unseen”
(テリー・オニール : レア・アンド・アンシーン)
3月24日(日)までブリッツで開催中
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料


ブリッツ・アネックスが今春に誕生
アート写真の情報発信拠点を目指します!

今春、ブリッツ・ギャラリーの隣にブリッツ・アネックスが誕生する。現在、様々な利用方法を検討中だ。これからいくつかの具体化する可能性の高いプロジェクトを紹介していきたい。

まず洋書とレアブックの新しい情報発信拠点を考えている。
最初に、いままで20年くらいの洋書写真集の市場環境の変化を振り返ってみよう。90年代から2000年代には、写真集やCDを輸入販売するショップがまだ数多く存在していた。ところがアマゾンが登場して、一般に普及する中でそれらのショップの存在感がどんどん薄れていった。洋書写真集では、私たちの買い方が大きく変化した。かつては専門店で実物を手に取りページをめくって収録イメージと印刷の質などを確認の上で購入するのが当たり前だった。それが、ウェブ上の商品情報と限られたヴィジュアル紹介だけで判断するようになった。重い写真集が自宅まで送られてくる上に、いまやアマゾンでは送料込みでほぼ現地価格と同じ円貨で購入できるのだ。場合によっては現地以下の価格で買える場合もある。もはや貴重な輸入高級品ではなくなったのだ。かつては、内外に大きな価格差があり、海外出張時には膨大な数の写真集を持ち帰ったものだった。これでは洋書専門店が淘汰されるのは当然のことだろう。
そして次にネット書店の破壊力はレアブック市場にも波及した。いままでは業界関係者しか知らなかった個別写真集の相場情報がネットにより広く普及してしまった。一般の人でも簡単に検索可能になり、個人がネットオークションなどで相場情報をもとに値付けして販売するようになった。結果的に、人気が高いレアな写真集は、業者の仕入れ価格が大きく上昇した。また供給が世界的に増加して、定番レアブックの相場はかなり下落した。つまり業者の利益率が大きく減少したのだ。
いま思えば、2008年くらいが、ちょうどフォトブック・ブームと相まって、相場のピークだったと思う。当時に人気があったのが昭和期の日本人写真家。川田喜久治の”地図”のサイン付き初版は状態によっては500万円以上の販売価格が付いていた。ただし実際に売れたかは不明だ。
情報の民主化により誰でもレアブック売買が可能となった。レアとは貴重という意味。かつては海外の専門ショップの店頭で欲しい絶版本を見つけると、二度と出会いがないかもしれないと考えて、多少高くても購入していたものだ。しかし、今ではレアで貴重で高価な本ほどネットで検索しやすいのだ。そのレア度は従来よりもかなり低くなってきたと思う。逆に不人気本はネットに情報が上がらないので見つけにくくなっている。結果的にレアブックのディーリングは単体の商売としては成立しにくくなった。私どもも、2000年代は海外から洋書レアブックを輸入販売していた。しかし2010年代には、ギャラリーの資料用の輸入中心にシフトしていった。

さて現状はどのようになっているだろうか。
私はアート・フォト・サイトというアート写真専門サイトを長年運営している。毎週1冊アマゾンで購入できる洋書写真集を紹介し続けている。このところ感じているのは、写真集の情報量があまりにも膨大になっていること。デジタル化の進行で出版コストが劇的に下がったことによる世界的な出版数増加が大きく影響している。仕事だから行っているが、アマゾンで紹介されている本をフォローするだけでもかなり負担が大きい。それ以外に、アマゾンを毛嫌いしている独立系出版社や写真集専門サイトも多く存在する。出版社や販売業者からは、自分たちが出版したこんな素晴らしい本を買わないのは無能であるかのような文面のメールが日々送られてくる。そのような情報により実際に購入したが期待外れだったというケースも多くなってきた。一般の人だと情報量が多すぎて何を買ってよいのかが判断不能になっていると感じる。しかし、業者情報をたよりにした試し買いに失敗すると、2度目のトライにはかなり慎重になるだろう。実際に質の高いフォトブックの割合はあまり変化していないと思う。

いま流通量、情報量が増加したことで、高級品で所有することが一種のステイタスで、高い趣味性を自己表現するものだった写真集が完全に一般商品つまりコモディティー化したのだと理解している。いまや音楽CDのビジュアル版のような存在になってしまった。CDと同様で、なかなか自分の心を動かすような名作には出会えないのだ。

さてブリッツ・アネックスだが、いまやすべてのカテゴリーのフォトブックをカバーするのは事実上不可能だろう。したがって、ギャラリーと同じく、アート系ファッション写真やポートレート写真を専門とする予定だ。それだけでも、膨大なタイトルの写真集が存在する。しかし、それは広い意味でとらえているので誤解しないで欲しい。基本となるのは、人間の心と頭脳を刺激してくれるフォトブックを紹介していくこと。心への刺激とは、各時代のもつ人々の価値観を伝えるような写真、時代性を感じさせる写真。具体的には、戦後から90年代前半くらいまでに撮影された写真の中に存在しているだろう。そして人間の頭脳を刺激してくれるものとは、自分のまだ知らない価値基準を提示したり、社会や宇宙の仕組みを明らかにしてくれるコンテンポラリーの写真。それらをピンポイントで見つけ出し興味を持つ人に紹介していきたい。
またギャラリー取扱い作家のマイケル・デウィック、テリ・ワイフェンバック、テリー・オニールなどの、新刊、レアブックの品揃え、在庫は充実させる予定。

想定している顧客はアート写真やアート系写真集のコレクターとプロの販売業者だ。ただし資料的価値が高く1冊しか在庫のない写真集は閲覧可能だが販売はしない。現物の情報を提供して、ネット書店での購入アドバイスを行う。
現在、複数個所に収納していた写真集をブリッツ・アネックスに集め、整理整頓を開始している。どうかオープンを楽しみにしていてほしい。

その他の利用法だが、各種セミナーや写真展の開催などを検討中。 追ってアイデアを紹介していきたい

テリー・オニール写真展の見どころ
チャリティー・コンサートの集合写真

伝説的ロックバンド・クイーンのボーカルのフレディ・マーキュリーの半生を描き、世界的に話題になっている映画“ボヘミアン・ラプソディー”。私はまだ予告編しか見ていないのだが、映画のクライマックスは1985年にロンドンのフォットボール用のウェンブレー・スタジアムでアフリカ支援目的で開催されたチャリティー音楽イベント「ライヴ・エイド」でのライブ・パフォーマンスだという。
このイベントの発起人は、ブーム・タウン・ラッツのリーダーだったボブ・ゲルドフ。アフリカの1億人の飢餓を救う目的で、ロンドンとフィラデルフィアで複数の当時のトップ・ミュージシャンによるライブ演奏が行われ、その模様は世界中に衛星同時生中継された。

実はこのイベントの参加ミュージシャンの集合写真をテリー・オニールが撮影している。手元の写真集によると、彼のライブ・エイドの写真は2種類ある。
まず、“Terry O’Neill’s Rock ‘n’ Roll Album” (2014年、ACC Editions刊)には、17名のカラー写真が収録。

©Terry O’Neill / Iconic Images

椅子に座ったティナ・タナ―を中心に、ポール・マッカトニー、エルトン・ジョン、ロッド・スチュアート、エリック・クラプトン、フィル・コリンズなどが写っている。

2枚目は、“Terry O’Neill: The A-z of Fame”(2013年、ACC Editions刊)、に“Princes Diana and Live Aids”というタイトルでモノクロの集合写真が収録されている。

ⓒ Terry O’Neill / Iconic Images

こちらは、当時のチャールス王子、ダイアナ妃を中心に約40名以上の集合写真。二人の王族の横には、エリック・クラプトン、フィル・コリンズがいる。ブライアン・メイ、レオナード・コーエンなどの顔もある。
このイベントは、ロンドンとフィラデルフィアで開催されている。写真には二つのイベントに参加したミュージシャンたちがいるところから想像するに、これらはライブの前後のどこかの時期にプロモーション目的で一部参加者が集合した機会に撮影されたのだと想像していた。
実は最近になって、専門家のお客様から、これらの写真はライブ・エイドではなく、カラーが1986年、モノクロが1988年のプリンス・トラスト・コンサートの集合写真ではないかと指摘を受けた。調べてみると、上記のコンサートは、CD及び映像化されていた。ジャケットの写真はまさに今回紹介したテリー・オニールの写真だった。どうも本人が勘違いしていて、それが写真集表記につながったようだ。彼のエージェントに情報を提供するつもりだ。ご指摘に心から感謝したい。

現在開催中のテリー・オニール写真展では、モノクロ写真の方が展示されている。写真集掲載写真は長方形にトリミングされているが展示作はオリジナルのスクエアー・フォーマットでプリントされている。上部に撮影の照明機材や会場のシャンデリアも写っている。本来は仕事の写真なのだが、人物と共に現場の様子を伝えることでパーソナルなドキュメント的要素を持つ作品として展示されているのだ。写真集と比べて画像がはるかに鮮明なので、自分の好きなミュージシャンの顔探しが可能だろう。写真の中心にいるダイアナ妃は、チャリティー活動に積極的だったことで知られている。はにかんだ笑顔のダイアナ妃はもうこの世にいない。テリー・オニールはポートレート写真で戦後の民主社会の気分と雰囲気を規定した写真家として知られる。彼のキャリア上、チャリティー・コンサートの集合写真も非常に重要な時代をドキュメントした作品なのだ。

実は私はロンドンで実際の「ライヴ・エイド」を体験している。資料を調べたら当時のチケットの半券、プログラム、ポスター、当時持っていたニコンFGで撮影した写真も同時に出てきた。

チケットを確認すると、入場料は5ポンド、寄付が20ポンドの、合計25ポンド(@330円/約8250円)だったことがわかる。
ちなみに同じころに隣にあるウェンブレー・アリーナで開催されたスティングのライブが14.5ポンドだったので、「ライヴ・エイド」は当時としてはかなり高価だったと思われる。

写真を確認すると英国でプリントしたコダック・ペ―パーはかなり変色していた。何枚かの写真を見ていると、関係者が観客席に水を撒いていることがわかる。非常に暑い夏の日のライブだった記憶がある。撮影した写真とプログラムに掲載されているミュージシャンの出演リストを見比べるにどうも写真を撮っていたのは前半の部分だけのようだ。開始は昼の12時でそれが夜の9時過ぎまで約20以上のライブ演奏が続いたのだ。当然、人気者はライブの後半に出演する。リストによるとクイーンは6時40分、デヴィッド・ボウイは7時20分の出演予定となっている。残念ながら彼らを撮影したものは発見できなかった。当時は、U2などの方が勢いがあり人気が高かった記憶がある。

個人的な一般論的な分析となるが、「ライヴ・エイド」が実現できたのは、80年代は先進国の人たちの間に共通の夢や未来像のようなものがあったからだと思う。皆が明るい豊かな未来のイメージを持っていたからこそ、協力してアフリカの飢饉を救うという発想が生まれたのではないか。しかしこれは先進国側の人たちの上から目線の発想と言えないことはないだろう。21世紀の現在は先進国でも貧富の差が拡大して、自分自身の生き残りで精いっぱいの人が多くなっている。現在このような音楽を通しての世界的なチャリティー・イベントの開催は難しいだろう。音楽界にしても、当時は世界中の人が知っているスーパースターのバンドやミュージシャンが複数いた。どのような音楽を聞くかは個々人のアイデンティティーとも深く関係していた。現在の音楽やファンは本当に多種多様で、ヒットやブームはみなパーソナルで局地的になってしまった。日本では洋楽自体が廃れてしまっている。映画”ボヘミアン・ラプソディー”のヒットは、かつての古き良き時代を懐かしむ風潮の表れなのだろうか。
ちなみに今回のテリー・オニール展も、ヴィジュアルで同じような体験ができる写真展だといえるだろう。

テリー・オニール 写真展
“Terry O’Neill: Rare and Unseen” 
(テリー・オニール : レア・アンド・アンシーン)
2019年1月12日(土)~3月24日(日)
1:00PM~6:00PM  月曜および火曜休廊  入場無料
Blitz Gallery

新年ブリッツの予定
テリー・オニール 写真展 “Terry O’Neill: Rare and Unseen”

ブリッツの2019年は、テリー・オニール写真展“Terry O’Neill: Rare and Unseen”でスタートする。彼の写真展は、2015年の“Terry O’Neill: 50 Years in the Frontline of Fame”(テリー・オニール : 華麗なる50年の軌跡)、2016年の“All About Bond”(オール・アバウト・ボンド:テリー・オニール写真展)と、2000年代で3回目となる。
ブリッツでは、まだギャラリーが広尾にあった4半世紀前の1993年にも、“Terry O’Neill: Superstars of 70s”(テリー・オニール :70年代のスーパースター)を開催している。2015年の本人の来日時に確認してみたが、当時はロンドンのギャラリー経由で作品を取り寄せたので、彼は日本での初個展開催のことは覚えていなかった。

実は私にとって、テリー・オニールはとても思い出深い作家なのだ。
80年代、私の興味は主に現代版画だった。それが1987年2月号の雑誌ブルータスに“写真経済学”という記事が掲載され写真に興味を持つようになった。そこにはアート作品として欧米で売買されているオリジナル・プリントの情報がかなり詳しく紹介されていた。当時、住んでいたロンドンの情報を調べてみると、写真専門ギャラリーはHamilton’s、The Special Photographers Company、Zelda Cheatle、The Photographers’ Galleryくらいしかなかった。もっとあったかもしれないが、ネットがない時代、アート情報は雑誌Time Outや新聞のアート覧に頼るしかなかった。そしてロンドンのポートベロ・マーケットの近くにあったThe Special Photographers Companyで、テリー・オニールの“Bardot、Spain”という1971年に女優ブリジッド・バルドーを撮影した銀塩オリジナルプリントを185ポンドで買った。カッコいい写真だと思い、衝動買いしたのを覚えている。当時の為替は1ポンド240円くらいだったので、円貨だと約4.4万円となる。いまでは、回顧写真集”Terry O’Neill: The A-z of Fame”(2013年刊)の表紙にもなっているテリー・オニールの代表作品だ。

Brigitte Bardot, Spain, 1971.
ⓒ Terry O’Neill

当時の私は、日本で誰もやっていない海外の新しいビジネスを立ち上げたいと考えていた。同業他社がいない分野の方が成功の可能性が高いと考えたからだ。版画を取り扱うギャラリーは数多くあったし、新規に参入しても生き残り競争は相当激しそうだった。

日本でも写真専門ギャラリーが創設されつつあったが、テリー・オニールのようなアート系のファッションやポートレートを扱っている商業ギャラリーは一つもなかった。まだ、ファッションやポートレート写真のアート性が市場で認められていなかった時代だった。販売価格も20世紀の写真史を代表する人たちよりも安かった。業界では、それらはインテリア用の写真作品という低い扱いだったのだ。世界的にも、ロンドンのHamilton’sとニューヨークのStaley Wiseくらいしか、この分野の写真作品を専門的には取り扱っていなかったのだ。ブリッツの誕生も、テリー・オニール作品との出会いがあったからと言えないことはない。

さて本展は、同名写真集の刊行を記念にて開催するもの。テリー・オニールは2019年7月に80才になった。いまやダイヤモンド・ドックの撮影で知られるデヴィッド・ボウイなど、彼が親しかった多くの被写体たちは亡くなっている。関係者によると、彼は新たな視点からの過去の作品の再評価が必要だと意識するようになったと語っていたという。彼の意向により、ここ数年にわたり写真家本人と専門家により膨大な作品アーカイブスの本格的な調査と見直し作業が行われた。その過程で、20世紀後半期の音楽界や映画界の貴重な瞬間をとらえたヴィンテージ・プリントが数多く発見されたのだ。
それらにはザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、フェイ・ダナウェイ、オードリー・ヘップバーン、ショーン・コネリー、エリザベス・テーラーなどの未発表写真が含まれていた。
2018年の秋、アーカイブスの整理が終わり、未発表作が写真集“TERRY O’NEILL : RARE AND UNSEEN”として刊行された。本書の刊行により、テリー・オニールによる戦後民主社会を象徴する数々の名作が生まれた背景が初めて明らかになったのだ。

The Beatles are leaving London from Heathrow Airport for the US ,1964
ⓒ Terry O’Neill

本展ではテリー・オニール・アーカイブスで再発見されたデヴィッド・ボウイと妻アンジーのヴィンテージ作品、80年代にプリントされたアナログ銀塩写真作品、新刊写真集に収録された重要ヴィンテージ作品から写真家により再解釈されて制作されたエディション付き作品、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、オードリー・ヘップバーン、ケイト・モスなどの時代を象徴する代表作があわせて展示される。展示総数はモノクロ・カラーによる合計約30点を予定している。
会場では、プリント付き限定本、サイン本、通常版、限定T-シャツなどが販売される予定だ。

テリー・オニール 写真展
“Terry O’Neill: Rare and Unseen”
(テリー・オニール : レア・アンド・アンシーン)
2019年1月12日(土)~3月24日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料

トミオ・セイケ 写真展 見どころを紹介(2)
「Street Portraits : London Early 80s」

ブリッツでは、トミオ・セイケの「Street Portraits: London Early 80s (ストリート・ポートレーツ:ロンドン・アーリー・80s)」展を開催中。今回は先週に続き、個別作品の見どころを紹介しよう。

一連のセッションで撮影された若い女性の写真が2枚展示されている。

デジタル・アーカイヴァル作品(左側)と、もう1枚は銀塩のヴィンテージ・プリント(右側)による。セイケによると、最初の写真では、女の子はストリートで異邦人の日本人に声をかけられての撮影だったので緊張気味だったという。2枚目の写真では、撮影場所をストリートではなく、白ペンキで塗られた住居の玄関ドア前に移している。女性の表情からは明らかに緊張感が薄れ、リラックスした様子に代わっている。その瞬間をセイケのカメラがとらえている。セイケによると、ストリートでこのような自然の表情を撮影できるのは奇跡的なことだという。
また2枚を比べると、20世紀のアナログ銀塩写真が黒と白の解釈であり、その中での抽象美の追求であるのがよくわかる。細部までの精緻な再現力では、デジタル・アーカイヴァル作品の方が優れている。銀塩写真は、部分的に黒はつぶれて、白はとんでいるのだ。銀塩と比べるとデジタルは中間トーンの再現力が優先されている印象だ。興味深いのは、長年にわたり写真に親しんできた年配の人は銀塩写真を好み、若い人はデジタル・アーカイヴァル作品の方が好きだという傾向があることだ。つまり、二つの写真表現を比べて優劣を語るのは全く意味がないということ。人の好みは、普段自分が見慣れた方に無意識のうちに親近感を持って形成されるのだろう。
かつてデジタル・アーカイヴァル作品で、銀塩写真っぽさを出そうとした写真家が多かった。しかしそれは意味のないことで、それぞれが全く別の表現だと考えるべきなのだ。セイケが2種類の写真を同時に展示しているのはそのような考えに至ったからだと思う。

若い男女のポートレートも人気の1枚だ。

二人の服装は男性が白系のセーターで女性がダーク系のコート、洋服のコントラストでモノクロームの抽象美を見事に強調した作品になっている。セイケは長年の習慣でファインダーをのぞくと、そこに見えるシーンが頭の中で自然にモノクロームになるという。たぶん、普通に街を歩いていても、そのようなシーンに無意識的に反応するのだろう。そしてフレーミングの絵作りで、黒と白の部分の調整をしているのだと思う。
セイケによると二人はかつてはお付き合いしていたが、ちょうど別れ話を終えたばかりの時に撮影されたとのことだ。そういわれると二人の表情に微妙な違いが見て取れる。男性は別れたことに未練を感じている風、一方で女性は妙にすっきりとした表情で既に新しい未来にわくわくしている感じに見えてくる。モノクロームの美しさと共にサイドストーリーを聞くとさらに味わいがある作品に感じてくる。

当時のファッションで最もアバンギャルドなのが、この若者の写真だろう。

アンティーク風のソフトハットをかぶり、ダブルのテーラード・ジャケットを羽織り、その下にはジギー・スターダスト時代のデヴィッド・ボウイがプリントされたT-シャツ、ボトムスにはサッカーなどの競技用と思われるややオーバーサイズのショート・パンツを合わせている。服のスタイル、デザイン、素材に統一感が全くないのだが、この若いハンサムな男性は自信に満ち溢れた堂々とした表情なのだ。伝統的なファッションは、数々の決まりごとがあり、そのルールの中でコーディネートを考えるが洗練されたセンスだと思われている。この写真のファッションはまさにその真逆なのだ。70年代後半に一世を風靡した、やりたいことをやれば良いというパンクの精神が色濃く反映されていると感じさせる。たぶんこのファッション・コーディネートの外し方は意図的で非常に高度な技なのだと思わされてしまう。

本展では、写真自体の洗練された美しさと共に、重層的なテーマ性、銀塩とデジタル・アーカイヴァル写真の対比、個別作品のストーリー性など、様々な見どころが発見できる。見る側は写真の表層だけを鑑賞するのではなく、ぜひ写真家のメッセージを意識的に読み解く努力を行ってほしい。コレクター、アート愛好家、アマチュア写真家が十分に楽しめる写真展だと思う。写真で行うアート表現のお手本だと言えるだろう。

トミオ・セイケ 写真展「Street Portraits : London Early 80s」は、12月16日まで開催。本展は日曜日もオープンしている。営業時間は午後1時~6時、月、火曜が休廊。

トミオ・セイケ 写真展 見どころを紹介 (1)
「Street Portraits : London Early 80s」

ブリッツでは、トミオ・セイケの「Street Portraits: London Early 80s (ストリート・ポートレーツ:ロンドン・アーリー・80s)」展を開催中。本展では、従来のファッションのルールを無視して、流行りの服、スポーツ・ウェアー、古着、安物アクセサリー、小物などを自由にコーディネートして楽しんでいる、80年代初めのロンドンの若者たちのポートレートを展示している。

前回その中の洗練されていない3名の若者たちの作品に触れた。MA-1っぽいフライトジャケットとロンデスデールのスウェット、フレッドペリーのポロシャツ、ローファー、ジーンズ、ジージャンを着た3人の若者が写っている。セイケがロンドンの若ものたちのファッションがカッコいいと感じたのは、当時の日本の若者のカジュアル・ファッションと比べてのことなのだと思う。
80年代初めの日本、多くの若者は自分で何が良いセンスなのか判断する基準を持っていなかったのではないか。したがって雑誌などが紹介するブランドの服を選びがちだった。大ブームになったボートハウスやデザイナー・ブランドのロゴやデザインがプリントされたスウェット・シャツ、ロゴマークがワンポイントで刺しゅうされた海外有名ブランドのポロシャツが、他人へのアピールの象徴だった。もちろん、当時の英国の若者はすべてお洒落で洗練されていたわけではなかった。日本人と同じようにブランド志向の人もいたわけだ。まさに本作の3人のファッションなのだ。私は、セイケが上記写真を展示作品にセレクションしたのには意図があると疑っている。

さて80年代初頭のロンドンの若者ファッションは、かなり今の日本の若者のファッションに近くなっていると感じるのは私だけだろうか。もしかしたら、本展のファッションを見た現代日本の若者は、それが当たり前すぎて自然に感じるかもしれない。日本人のファッションセンスが多様化、洗練化され、ロンドンのレベルに追いついたということだ。

いままでの約35年間に何が起きたかを見てみよう。80年代、ブランド志向の日本の若者は、学校を卒業すると企業に就職して、終身雇用、年功序列の、管理社会システムにがんじがらめになっていった。しかし彼らはロンドンの若者よりも自由はなかったが金銭的には安定していた。社会の大きなシステムから、消費の選択肢を与えられて、そのわずかな差異の追求が個性だと思い込まされて、企業のために働かされてきた。その典型例が、ブランド・ファッションとポップ・ミュージックなどだった。
そして21世紀の日本の若者はどのようになったのか。その後の経緯をあえて簡単なキーワードだけで語ると、バブル経済が崩壊して終身雇用は消失。グローバル化、新自由主義の浸透により、経済格差が拡大した。そしていま自国第一主義回帰の流れが世界的に起き、社会の未来像が極めて描きにくくなっている。80年代後半にかけて、一人当たりの名目GDP(米国ドル)は日本の方が大きかった。いまでは信じられないが、2000年は世界2位だったのだ。それが2017年は25位となり、24位の英国以下に順位を落としている。80年代と比べて拠り所だった経済の凋落は明らかで、多くの人は未来への大きな不安を抱えて日々暮らすようになった。まさに80年代のロンドンの若者が置かれたのと同じような状況になってきたと言えるだろう。

セイケは、80年代のロンドンの写真を21世紀の東京で見せることで、現代の日本社会についても語っているのだと思う。今や日本社会には、かつてのような安定した生き方はなくなってしまった。しかし、経済的に保証されるが管理社会の中で自分を殺して生きていくよりも、不安定でも、多少自由があり、ある程度自分で意識的にコントロールしていく人生も悪くはないというメッセージだと理解したい。

本作のロンドンの若者たちは、厳しい経済状況に関わらず決して悲観的ではなく、ポジティブな表情の人たちが多い。「Liverpool 1981(リヴァプール 1981)」展、「Julie – Street Performer(ジュリー – ストリート・パフォーマー)」展でセイケが一貫して提示してきたロンドンの若者たちの姿と同じだ。現代の日本では、80年代と違い人生の選択肢は生きている人の数だけ存在するようになった。そこには一つの正解はない。社会に共通の価値基準がなくなったいま、私たちは自分で考えて行動してその答えを探さなければならない。
本作は、そのようなことを考えるきっかけになるのではないだろうか。

“トミオ・セイケ 写真展 見どころを紹介 (2)”に続く

◎トミオ・セイケ 写真展
「Street Portraits : London Early 80s」
2018年 12月16日(日)まで開催、
1:00PM~6:00PM
休廊 月・火曜日 / 入場無料

ブリッツ・ギャラリー
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