ブリッツの最新情報/今秋の予定 日比谷OKUROJI PHOTO FAIR 2022に参加

ブリッツは、10月には「日比谷OKUROJI PHOTO FAIR 2022」に参加する。
これは日比谷の奥にある高架下「日比谷OKUROJI」に7つのギャラリーと8つの出版社/書店が集結にて開催される写真に特化した新しいアートフェア。
この開催場所はまだあまりなじみがないかもしれない。東京の中心地である日比谷・銀座の「奥」にあることに加え、高架下通路の秘めたムードを「路地」という言葉に置き換えることで「日比谷OKUROJI」と命名されたとのことだ。JR東日本(山手線、京浜東北線、東海道本線)と、JR東海(新幹線)が通る鉄道高架橋の下を300メートルにわたる施設となる。この地の象徴的な煉瓦アーチは、1910年(明治43年)にベルリンの高架橋をモデルにドイツ人技師の指導のもと建設されている。
なお同フェアは同時期に東京駅付近にて行われる「T3 PHOTO FESTIVAL」と連携して開催される。  

昨今のアートフェアはだいたい高額な入場料がかかるもの。しかし、同フェアはなんと入場無料となる。ぜひ多くの写真コレクションに興味ある人やプロ/アマチュア写真家に遊びに来て欲しい。

ブリッツの展示予定作品に触れておこう。目玉になるのは、鋤田正義の初公開となる約30年以上前に本人により手焼きされた1点ものの貴重なヴィンテージ作品5点の展示となる。デヴィッド・ボウイ、マーク・ボランなどの作品が含まれる。その他作品のセレクションは現在進行形。テリー・オニール、ハーマン・レナード、ノーマン・パーキンソンや、ブリッツの人気作家テリ・ワイフェンバック、マイケル・ドウェック、珠玉のファッション写真のセレクションも持ち込む予定にしている。
また昨年に出版された鋤田正義の「SUKITA:ETERNITY」の特装版。こちらの3種類のプリントを見たことがないという顧客からの意見があるので、同フェアには現物を持ち込むつもりだ。こちらは一部のセットは残数が極めて少なくなっている。興味ある人はぜひ実際のプリントを見極めてコレクションの対象として検討して欲しい。

フォトフェア開催中は、私はだいたい会場にいる予定。可能な限りコレクションなどの質問に対応したい。遠慮なく声をかけてください。

〇日比谷OKUROJI PHOTO FAIR 2022開催概要
■会 場: 日比谷OKUROJI
東京都千代田区内幸町1-7-1
■会 期: 2022年10月7日(金)~ 2022年10月10日(月・祝)
■ギャラリー:
Blitz Gallery
BLOOM GALLERY
KANA KAWANISHI GALLERY
PGI
POETIC SCAPE
The Third Gallery Aya
和田画廊
■出版社:
ふげん社
銀座 蔦屋書店
KANA KAWANISHI ART OFFICE
リブロアルテ
PURPLE/赤々舎
青幻舎
Shelf
torch press   ※アルファベット順

■入場料: 無料
■主 催: 日比谷OKUROJIアートフェア実行委員会
■会場協力: 株式会社ジェイアール東日本都市開発
■後 援: 千代田区
■同時期開催連携イベント: T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2022
公式サイト

〇ブリッツ・ギャラリー今秋の予定
次回は10月14日からテリ・ワイフェンバック「Saitama Notes」展となる。今回は2つのパートに分けて、展示架け替えを行って来年まで開催する予定。開催の詳細については次回に案内したい。詳細

鋤田正義”SUKITA ETERNITY”展
名古屋で8月に開催!

鋤田正義は、自らの半生を振り返ったとき、ずっと「あこがれ」を追い求めてきたと語っています。その強い思いが彼のニューヨーク/ロンドン進出へと突き動かしたのです。そして彼のキャリアを本格的に回顧する集大成が、写真集「SUKITA  ETERNITY」(ACC Art Books/玄光社)なのです。この写真集刊行により、初期のプロヴォーグ的ドキュメント作やライフワーク的な風景作品が紹介され、鋤田作品の全体像がはじめて明らかになりました。被写体の内面を引き出した代表作のポートレート写真にとどまらず、その多彩な作品の作家性の再評価が始まるきっかけとなりました。
デヴィッド・ボウイは鋤田のことを“may he click into eternity”と語っています。写真集のタイトル「ETERNITY SUKITA」は、編集に携わったカンベル・ガン氏の発案によりこの言葉から取られています。これは、鋤田は悠久の時を刻むようにシャッターを切る、というような意味になります。

写真集「SUKITA  ETERNITY」が世界同時発売したのが2021年の7月でした。コロナ禍に関わらず、いままでに刊行記念の写真展や作品展示のイベントを、ブリッツ・ギャラリー、銀座蔦屋書店、六本松蔦屋書店などで行ってきました。「SUKITA  ETERNITY」のデヴィッド・ボウイ作品やプリント付き特装版は、いま美術館「えき」KYOTOで7月24日まで開催中の「時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA リターンズ 鋤田正義写真展」でも紹介されています。

発売から約1年が経過して、東京、福岡、京都を経て、ついに刊行記念写真展が名古屋で開催されます。実は、名古屋/中部地方には数多くの鋤田正義ファンがいます。2018年には、デヴィッド・ボウイを撮影した、テリー・オニール、ダフィー、などの複数写真家のグループ「BOWIE:FACES」名古屋展に鋤田は参加。参加写真家を代表して鋤田が伏見の電気文化会館で行ったトークイベントは大盛況でした。
今回の「SUKITA  ETERNITY」展も、「BOWIE:FACES」と同じ納屋橋 髙山額縁店2Fで行われます。展示作は写真集に収録された、デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、マーク・ボラン、YMO、忌野清志郎などのミュージシャンの代表的ポートレート作品を中心にセレクションされました。またキャリアを通して撮影してきた風景、ストリートなどのパーソナル作品など、様々なサイズの約30点が展示予定です。

「BOWIE:FACES」展、@納屋橋 髙山額縁店

また本展でぜひ注目して欲しいのは写真集のプリント付きの限定特装版です。豪華な布張りの特製ケース付きのコレクターズ・アイテムで、付属する3点のプリント作品の現物が名古屋で初めて展示されます。
作品は“David Bowie, Dawn of Hope, 1973”、“David Bowie, from ‘Heroes’ Session, 1977”、“Tate Modern, 2008” の3種類です。これら写真作品は特装版のみでの販売となります。すべて鋤田正義の直筆サイン入り。写真サイズは8X10″(約20.3X25.4cm)。特装版は3仕様が用意されていて、コレクター向けに全作が収録される3枚セット(A)が70点、特にボウイ・ファンのために、
“David Bowie, Dawn of Hope, 1973” と “Tate Modern, 2008” の2枚セット(B)が90点、 “David Bowie, from ‘Heroes’ Session, 1977” と
“Tate Modern, 2008” の2枚セット(C)が40点用意されています。

SUKITA:ETERNITY 特装版の収録プリント

鋤田正義の約40X50cm、エディション30の作品は、約22万円(税込み)。特装版のプリントサイズは小さいですが、3枚セットが74,800円(税込み)、2種類ある2枚セットが44,000円(税込み)で購入可能。極めてお値打ちの価格設定になっています。これには、日本でも写真がファインアート作品としてコレクションの対象になってほしいという鋤田の願いが込められています。一部セットは残り僅かになっています。ぜひ会場で現物の価値を見極めてください。鋤田やボウイファンはもちろん、写真を初めて買う人にも最適な作品だと言えるでしょう。

・名古屋展開催情報
2022年8月6日(土)-14日(日)
9:00-19:00(日曜/12:00-19:00)(*ご注意 最終日は17:00まで)
会場:納屋橋 髙山額縁店2F 
〒450-0003 愛知県名古屋市中村区名駅南一丁目1-17
写真展詳細

「ファインアート写真の見方」刊行記念
著者によるトークイベントを名古屋で開催

*新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み、本イベントの開催は中止となりました。何卒ご了承ください。

(ご注意)
新型コロナウイルスの感染状況によっては、写真展/イベントが中止/延期になる場合があります。予めご了承ください。

美術館「えき」KYOTOのボウイ展がリターンズ!
鋤田がボウイ目線で約40年後の京都を撮影

デヴィッド・ボウイは、京都をこよなく愛したことで知られている。山科区に住居を持っていたという都市伝説もあるくらいだ。その発信源だといわれているのが、鋤田正義がボウイをまるで京都で暮らしているかのように撮影した一連のスナップなのだ。1980年3月、ボウイは宝酒造(伏見区)の焼酎「純」の広告の仕事で京都を訪れている。ロケ地はボウイが指定した正伝寺だった。ボウイは鋤田をアーティストとして尊敬していたから、広告撮影はあえて彼に依頼しなかったことが知られている。日本とは違い、欧米ではアーティストは自己表現を追求する人だと考えられており、めったに広告の仕事を行わないのだ。

(C)SUKITA

ボウイは仕事が終わった後に、鋤田を京都に招待して共にプライベートな時間を過ごしている。鋤田は自らの提案で、ロックのカリスマの鎧を脱いだ普段着のボウイを、京都の街並みを背景にドキュメント風に撮影した。数々の歴史的名作がこの時の撮影から生まれている。
名盤「ジギー・スターダスト」裏カヴァーのオマージュのテレフォン・ボックスでの電話通話、町屋の並ぶ路地の散策、古川町商店街での鰻の八幡巻きの買い物、阪急電車による移動、旅館での浴衣姿などの写真は、ボウイのファンなら見覚えがあるだろう。自然なたたずまいのボウイの姿を見た人が、彼が京都に暮らしていると思ったのも納得する。

(C)SUKITA

2019年から3回にわたり、鋤田はコロナ禍の京都で約40年前にボウイを撮影した場所を再訪する。彼はボウイの新旧の写真を通して悠久の都「京都」における、時間経過の可視化に挑戦した。“京都は変わってないと思っていたが、3回撮ってみたら、変わっていた……”と鋤田は語っている。(カタログから)
展覧会ディレクションは、プロデューサー立川直樹氏。カタログに掲載されている同氏のエッセーは、とても読み応えがある。

実は2021年4月3日に開幕した写真展「時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA」は新型コロナウイルス感染拡大により、5月の大型連休前に急遽中断となってしまった。大型連休に訪問予定だった多くのファンは、残念ながら同展を見ることができなかったのだ。その後アンコール開催の声が多数寄せられたことから、同展は「時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA リターンズ 鋤田正義写真展」として、再び開催されることになった。展覧会のフライヤー中央部には黄色の文字で「リターンズ」と追加記載がされている。今回はボウイの名盤「ジギー・スターダスト」誕生50年の年でもあることから、この時代の作品が前回よりも多数展示されているとのことだ。残念ながら、本展では鋤田正義のトークイベントやサイン会は予定されていない。しかし、会場では同展カタログの他に、昨年7月に刊行された「SUKITA:ETERNITY」のサイン本やプリント付き特装版が予約販売される予定だ。

京都ではちょうどアンビエント・ミュージックの第一人者で、ボウイのベルリン3部作の制作に関わったブライアン・イーノの音と光の展覧会「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」が8月21日まで、京都中央信用金庫 旧厚生センターで開催中だ。鋤田はイーノが手掛けたボウイの「Heroes」のカバーを撮影している。京都は鋤田に、ボウイ、イーノとの不思議な縁をもたらしている。

展覧会を見て回って時間があったら、ぜひボウイが訪れた、画材屋「彩雲堂」、老舗蕎麦屋「晦庵 河道屋」、正伝寺なども訪れたい。

時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA リターンズ
鋤田正義写真展
美術館「えき」KYOTO(ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
2022年6月25日(土)~7月24日(日)

【展示作品】
出展数:約200点
①1980年3月29日、京都で撮影したボウイ=39点
②2020~2021年 京都撮りおろし作品=115点
③ボウイとの仕事、ボウイゆかりの地など=22点
④ボウイ(タペストリープリント)=4枚

開催情報

フォトブック・コレクションへの誘い
Blitz Photobook Collection 2022 開催中!

ブリッツでは国内外の貴重な写真集、限定本、サイン本、プリント付き写真集を紹介する「ブリッツ・フォトブック・コレクション2022」を開催している。

5月はブリッツにとって写真集を紹介する季節だ。私どもは、1990年代から2000年代にかけて、かなり積極的に貴重な絶版写真集を取り扱っていた。特に2000年代には、いまはなき渋谷のパルコパート1のロゴスギャラリーで「フォトブック・コレクション」展を5月の連休明けに開催していた。2004年から2010年までに7回行っている。
インターネットの普及前の時代は、絶版になった人気写真集の入手はかなり困難だった。今では信じられないだろうが、海外の専門店が定期発行する在庫目録を郵送してもらい、希望する本をファックスで注文していた。決裁はクレジットカードで、荷物が届くのに早くても1か月くらいかかったものだ。
画像などないので、本の状態は受け取るまでは正確には分からなかった。「Very Good」という海外の状態表記が、日本人の感覚ではかなり傷みがある「普通」状態なのだと実体験を通して学んだものだ。その後、インターネットが一般に普及するようになり、大手のアマゾンやヤフオクでも絶版写真集を取り扱うようになる。市場での本の相場は、だれでもネット検索で調べられるようになる。その結果、利益率が大幅に縮小して、ビジネスとして成立しなくなるのだ。ブリッツは2010年代には絶版写真集の輸入販売からは撤退することになる。そして、ギャラリーでは数年に1回程度、オリジナル・プリントとともに絶版写真集を展示するイベントを開催するようになる。この辺の経緯は「ファインアート写真の見方」(玄光社2021年刊)に詳しく書いた。興味ある人はどうか読んで欲しい。

過去20年ぐらいで写真のデジタル化が進行し、写真表現は写真家以外の幅広い分野のアーティストに広く取り入れられるようになった。いまでは写真はアート表現のひとつの方法として一般化しているといえるだろう。そして多数のヴィジュアルをシークエンスで紹介する写真集フォーマットがアーティストの世界観やコンセプトを伝えるのに適していると認識されるようになった。いまでは、ファインアート系の写真を収録した写真集は、単なるコレクターの資料ではなく、それ自体が資産価値を持ったアート作品と認められているのだ。海外市場では、いま一般的な写真を多数収録したフォト・イラストレイテッド・ブックと区別されて、それらはフォトブックと呼ばれるようになった。

今年の企画では、フォトブックと写真のオリジナル・プリント作品の関係性を探求した。ブリッツが取り扱う写真家/アーティストの名作フォトブックと、収録されている写真作品を壁面で紹介するコーナーを設けている。またコレクター人気の高いファインアート系ファッション写真のコーナーも設置。多くの名作と関連フォトブック、60年代のヴィンテージ・ファッション・マガジンを紹介している。もちろん、すでに絶版になって入手が困難なレアブックも多数展示している。いま海外では、優れたフォトブックはオークションでも取り扱われるようになり、コレクション市場も拡大している。販売価格が数万円するフォトブックも数多く存在している。コレクターはそれらをコレクションの資料ではなく、フォトブック形式のエディション数が大きな写真のマルチプル作品だと考えているのだ。本としては高価だが、ファインアート作品だと認識すると非常にリーズナブルなのだ。特にコレクターは高価でもサイン本を購入する傾向が強いのだ。

ファインアート系写真のコレクションに興味を持っている人は多いだろう。しかし、有名写真家の作品は以前と比べてかなり高価になってしまった。また最近の円安傾向や輸送費高騰により、特に海外作品の価格の上昇傾向が強まっている。しかし、フォトブックのコレクションならまだリーズナブルな価格のものが数多くある。さすがに海外の有名アーティストのプリント付きのフォトブックとなると価格は決して安くはない。しかし、最近はそれらを外貨資産を持つような意識で抵抗なくコレクションする人も見られるようになった。まずはフォトブックから始めて、次第に高額な写真作品をコレクションするようになる人が日本でも増加している印象だ。フォトブック分野は、コレクター初心者にとっては、アート・コレクションが低予算で始められる最後の魅力的分野だといえるだろう。今回のイベントがそのきっかけになることを願いたい。

・写真家別のフォトブック&オリジナルプリント コーナー
テリ・ワイフェンバック
「Between Maple and Chestnuts」、「Cloud Physics」、「Instruction Manual」や過去のレアブックなど

マイケル・ドウィック
「The End: Montauk NY」(10周年記念版)、「Mermaids」など

鋤田正義
「Sukita : Eternity」、「Bowie Icons」、「Bowie X Sukita」など

テリー・オニール
「Rare and Unseen」、「Every picture tells a story」、「Terry O’Neill’s Rock ‘n’ Roll Album」など

・ファッション写真コーナー
ノーマン・パーキンソン、ホルスト、ジャンルー・シーフ、ダフィー、デボラ・ターバヴィル、ベッテイナ・ランスなどの写真作品、60年代のヴィンテージ・ファッション・マガジン、各種ファッション系フォトブックを展示

・サイン入りフォトブック
リチャード・アヴェドン、アーヴィング・ペン、ウィリアム・エグルストン、メルヴィン・ソコルスキー、ジャック・ピアソン、マリオ・ソレンティ、ライアン・マッキンレイ、トッド・ハイド、シンディー・シャーマンなど

・オリジナル・プリント付フォトブック
メルヴィン・ソコルスキー、マイケル・デウィック、テリー・オニール、鋤田正義、テリ・ワイフェンバック、アレック・ソスなど

(ブリッツ・フォトブック・コレクション 2022)
2022年 5月11日(水)~ 6月26日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜 /入場無料 

マイケル・ドウェックの名作解説(3) “Habana Libre”(2011年作品)

ブリッツ・ギャラリーは、米国ニューヨーク出身の写真家/映画監督マイケル・ドウェック(1957-)の写真展「Michael Dweck Photographs 2002-2020」を開催中。彼が監督/制作した第2作目の長編ドキュメンタリー映画「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」の日本での劇場公開記念展となる。

本展では、「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」からの作品と共に、ドウェックのいままでの主要シリーズ「The End: Montauk, N.Y.」、「Mermaids」、「Habana Libre」のアイランド三部作から、代表作も含めた27点を展示中。最近になってドウェックの存在を知った人は、今までの作品をあまり知らないだろう。本展開催に際して、彼の代表作が生まれた背景や評価されている理由を解説してきた。

第3回はアイランド3部作の完結編「Habana Libre」を取り上げる。
ブリッツでは、写真集「Habana Libre」(Damiani/2011年)の刊行に際して、2011年12月から2012年2月かけて写真展を開催している。同作でドウィックが舞台に選んだのは共産主義国家のキューバ。彼は2009年以来、同地を8回も訪問しフィルム約500ロール分の撮影を行っている。本作で撮影されているのは、ナイトクラブのパーティー、若者のナイトライフ、スケートボーダー、ファッションショー、音楽ライブ、ビーチライフ、サーフィンなどのシーン。まるでマイアミや南米リオデジャネイロなどの観光地のような写真作品だが、撮影場所はキューバなのだ。
本作で、ドウィックは階級がないはずの共産主義国キューバに存在するクリエィティブな特権階級のファッショナブルな生活を探求している。西側はもちろん、キューバでも知られていない同国内のシークレット・ライフを初めて紹介するドキュメント作品なのだ。 ドウィック によると、かれらのコミュニティーはまるで多分野の芸術家、文化人が集った30年代のパリのサロンの雰囲気を彷彿させたとのこと。

ⓒ Michael Dweck

「Habana Libre」も 、前2作と同様に被写体はモデルのようなカッコイイ人たちばかりだ。しかし決してファッション写真の様なモデルを起用して撮影した作り物のイメージではない。
撮影にはキューバ政府が非常に協力的だったという、カメラ機材の持ち込みにも配慮があったそうだ。その背景には、当時高齢だった最高指導者フィデル・カストロ(1926-2016)後のキューバの青写真があったようだ。将来的に文化観光事業を国の根幹の産業に育てたいという意図があり、ドウィックのキューバでの作品制作はその意図に合致していたのだろう。
キューバというと、ライ・クーダとヴィム・ヴェンダース監督による「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の、古い街並みと50年代の古いアメリカ車が走っているイメージがあるだろう。いまでも多くの住民は経済的には非常に貧乏だという。しかしキューバ社会には、本作で紹介されたような、アーティスト、作家、俳優、モデル、ミュージシャンたちの階級が存在するのだ。彼らの生活で重要なのはお金ではなく、社会的コネクションなのだという。それは、お互いの才能を認め合った多分野のクリエイティブな人たちのコミュニティーなのだ。なんとその中には、革命家のチェ・ゲバラ、フィデル・カストロの息子二人も含まれている。ドウィックは彼らの貴重なポートレートも撮影、それらは写真集に収録されている。
この分野の人材が育ったのは、1959年の革命以来、キューバ政府が文化振興に力を入れたという歴史的背景があるそうだ。この状況を的確に言い表しているのが、“キューバは経済的には貧乏だが、人材的には豊かだ” というキューバUNICEFの副代表Viviana Limpias氏のコメント(同名写真集に収録)。これは、お金がなくてもそれぞれが自分を磨いて魅力的になれば、周りに人が集まり幸せになれる、ということ。これこそは、過度にお金を追求し続ける現代アメリカ人に対しての、本作を通してのドウィックからのメッセージではないだろうか。
なお同写真展はハバナのFototeca de Cuba museumでも2012年に開催されている。これはキューバ革命後、アメリカ人写真家による初めての個展だったという。米国とキューバとの文化的な関係性を取り上げるとともに、オバマ政権下の2015年の国交再開を示唆した作品として注目された。

ⓒ Michael Dweck

会場では、写真集「Hbana Libre」(2011年Damiani刊)の限定100部のプリント付き、サイン入り特装版が限定数販売されている。彼のほとんどの作品は今やかなり高額になっている。この特装版は極めてお買い得といえるだろう!

ⓒ Michael Dweck

〇開催情報

「Michael Dweck Photographs 2002-2020」
(マイケル・ドウェック 写真展)
2022年 2月16日(水)~ 4月24日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料
(*ご注意)新型コロナウイルスの感染状況によっては入場制限や予約制を導入します。詳しくは公式サイトで発表します。

ブリッツ・ギャラリー
〒153-0064 東京都目黒区下目黒6-20-29

映画「白いトリュフの宿る森」
公式サイト

マイケル・ドウェックの名作解説(2) “Mermaids”(2008年作品)

ブリッツ・ギャラリーでは、米国ニューヨーク出身の写真家/映画監督マイケル・ドウェック(1957-)の写真展「Michael Dweck Photographs 2002-2020」を開催中。彼が監督/制作した第2作目の長編ドキュメンタリー映画「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」の日本での劇場公開記念展となる。
本展では、「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」からの作品と共に、ドウェックのいままでの主要シリーズ「The End: Montauk, N.Y.(ジ・エンド・モントーク、N.Y.)」、「Mermaids(マーメイド)」、「Habana Libre(ハバナ・リブレ)」のアイランド三部作から、代表作も含めた27点を展示している。
ブリッツのマイケル・ドウェック写真展は、2016年の「Michael Dweck : Paradise Lost」以来となる。最近になって彼の存在を知った人は、今までの作品をあまり知らないだろう。本展開催に際して、彼の代表作が生まれた背景や評価されている理由を解説する。

第2回は彼の第2作目で、出世作となった「Mermaids」を取り上げる。ブリッツでは、写真集「Mermaids」(Ditch Plain Press/2008年)の刊行に際して、2008年10月から12月かけて「American Mermaids」展として開催している。ドウェックは、デビュー作に続き本作でも、現代に残る古きよき時代の憧れのアメリカン・イメージの追求行っている。マーメイドというと、ロン・ハワード監督によるダリル・ハンナ主演の映画「スプラッシュ」や、ディズニー映画の「リトル・マーメイド」など、若く美しい女性像が思い浮かべる人が多いだろう。

ⓒ Michael Dweck 禁無断転載

本作では、現代に生きる実際のマーメイドたちのドキュメントを通して、理想のアメリカン・ガール像の提示に挑戦している。最初、本作を見た多くの人はモデルをプールで泳がせて撮影した作り物の作品だと勘違いした。本作ではフロリダ州の小さな漁村アリペカが主要な舞台になっている。被写体はすべて澄み切った水と共に実際に生活している現地の女性たちで、本作は彼女たちのドキュメンタリー作品なのだ。彼女たちは「ウォーターベイビース」と呼ばれており、まるで水中が住みかのように生活し、5~6分間も水中に潜ることができるとのこと。ドウェックは、現地の美女たちを現代のマーメイドに見立てているのだ。
ブロンドヘアーの女性たちはブルーやグリーンの美しい水中空間を背景に、光、影、反射、水のレンズ効果を駆使することでまるで抽象絵画のように表現されている。夜間の水中撮影では、彼女たちの美しい肉体フォルムが闇の中に、シンプルかつモダンに浮かび上がる。マーメイドたちは完璧なボディーフォルムを際立たせるために、大掛かりな投光機材を現場に持ち込んで撮影が行われたという。しかし、彼女たちの素顔がシルエットになり良く見えないなのが本作の特徴でもある。価値観が多様化した現代では、誰もが認める絶対的な美人などもはや存在しないだろう。見る側は顔がはっきり見えないマーメイドのイメージに想像力が掻き立てられ、それぞれが持つ理想のアメリカン・ガール像を重ね合わせる仕掛けなのだ。本作はマーメイド像を通して現代の価値観の多様化を表現する広義のファッション写真ともいえるだろう。
欧米文化の影響を受けた日本人にとってもマーメイドは憧れの西洋女性像の象徴だ。同展の来場者や写真集購入者は、自分の持つ理想像をドウェックのマーメイドたちの姿に重ね合わせたのではないだろうか。

ⓒ Michael Dweck 禁無断転載

ⓒ Michael Dweck 禁無断転載

2015年、ドウェックはシルエットで泳ぐマーメイドの姿を使ったサーフボード型の手作りオブジェの制作に挑戦する。このころになると、写真のデジタル技術が大きく進歩し、アーティストはアナログ時代の技術上の様々な制限から解放されて作品を自由に思い通りに制作できるようになる。デジタル写真の持つ様々な可能性が探求され、数多くのハイブリッドな作品が登場した時期と重なる。ドウェックの写真彫刻は、非常に手間がかかり、制作コストも高額だった。まずマーメイドのイメージをシルクにアーカイバル・ピグメントを使用してプリントし、ボード型のポリエステル・フォームに巻き付ける。その後、グラスファイバーと7層の高光沢樹脂でコーティングされている。本作はインクジェット技術の進歩により可能になった写真彫刻なのだ。
これらは写真のマルチプル作品として市場でも高く評価されている。2017年11月2日のフィリップス・ロンドンの“Photographs”オークションでは、サーフボード3枚に“Mermaid 18b”作品がプリントされた“Triple Gidget from Sculptural Forms, 2015”が、57,500ポンド(1ポンド150円/約862万円)で落札されている。従来の写真作品というよりも、写真表現を使った現代アート作品だと市場では認識されているのだ。

現在開催中の写真展では写真集「Mermaids」(Ditch Plain Press/2008年)と「Mermaids 18」 の大判ポスターを限定数だけ販売中。

〇開催情報「Michael Dweck Photographs 2002-2020」
(マイケル・ドウェック 写真展)
2022年 2月16日(水)~ 4月24日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料
(*ご注意)新型コロナウイルスの感染状況によっては入場制限や予約制を導入します。詳しくは公式サイトで発表します。
会場:ブリッツ・ギャラリー
〒153-0064 東京都目黒区下目黒6-20-29 アクセス

〇映画「白いトリュフの宿る森」大ヒット上映中
上映情報は公式サイトでご確認ください。

マイケル・ドウェックの名作解説(1) “The End: Montauk, N.Y.”

ブリッツ・ギャラリーは、米国ニューヨーク出身の写真家/映画監督マイケル・ドウェック(1957-)の写真展「Michael Dweck Photographs 2002-2020」を2月16日から開催する。

彼の日本語表記だが、今回から「ドウェック」とした。これは本展が彼が監督/制作した第2作目の長編ドキュメンタリー映画「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」の日本での劇場公開を記念して開催されるから。映画での表記に合わせて変更した。
ブリッツが彼の写真展「ザ・サーフィング・ライフ」展を開催したのは2006年5月になる。実はその前、ある洋服ブランドの青山本店のリニューアル・オープンに合わせて、彼の作品が展示された。その時の表記「デウィック」をずっと踏襲して使用してきたと記憶している。

さて、本展では、「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」作品と共に、ドウェックのいままでの主要シリーズ「The End: Montauk, N.Y.(ジ・エンド・モントーク、N.Y.)」、「Mermaids(マーメイド)」、「Habana Libre(ハバナ・リブレ)」のアイランド三部作から、代表作も含めた27点を展示している。
写真から映像作品まで、幅広い分野で活躍するヴィジュアル・アーティストのドウェックのいままでのキャリアを本格的に回顧する写真展となっている。早いもので彼の最初の写真展示から約16年が経過している。また多くのフォトブックはレアブックとなり、高額になっている。最近になって彼の存在を知った人は、今までの作品をあまり知らないだろう。本展に際して、彼の代表作が生まれた背景や評価されている理由を解説したいと思う。

まず第1回は彼のデビュー作「The End: Montauk, N.Y.」を取り上げる。


Sonya Poles, Montauk, New York, 2002 ⓒ Michael Dweck 禁無断転載

本作の撮影場所モントークは、ニューヨーク州ロングアイランドの東端に位置する。島の一番最後の地であることから「The End」と呼ばれており、作品タイトルはこれを意味する。ブリッツでは、2006年5月に行った写真展「ザ・サーフィング・ライフ」で一連の作品を紹介している。代表的ビジュアルは、写真集「THE END:MONTAUK N.Y.」(2004年、Harry N. Abrams 刊)の表紙のイメージ。オールヌードの若い女性がサーフボードを抱えて走る写真なのだが、卑猥さなど微塵も感じない透明感あふれる健康的で美しいモノクロ作品だ。当時のギャラリーのオーディエンスは、男女を問わず本作を「エロカッコイイ」と呼んで評価していた記憶がある。また写真集を見た多くの人は、プロのモデルをモントークで撮影したファッション写真だと信じていた。実は本作はドキュメント写真のアプローチで制作されている。この象徴的イメージを含めて、写真集収録写真の被写体はすべてモントークで暮らすローカル・サーファーだったのだ。

モントークはニューヨーク市マンハッタンから100マイルほどにある。ニューヨーク生まれのドウェックは、1975年以来この地を頻繁に訪れてきたという。かつては地元の人だけがサーファーを楽しんでいる静かな漁村だったそうだ。よそ者の視線を気にする必要がないので、水着を付けないでサーフィンが出来るほど自由な環境が本当にあったという。みんなが仲間同士で、そのコミュニティーの中で部外者を寄せつけずに、自分たちだけのルールを守り自由気ままに生きていたのだ。90年代になり、ヤッピーたちがマンハッタンから大挙してモントークを訪れるようになる。いまではイーストコースとのサーファーズ・パラダイスになっている。古くからこの地を知るドウェックは、町の魅力が急激に失われていくことに危機感をいだく。彼は消えゆく古き良き時代のシーンをドキュメントしようと考え、2000年初めにプロジェクトを開始するのだ。
ドウェックはまず、サーファー・コミュニティーに入り込み、彼らとの関係性構築を模索する。サーファーたちの佇まいや表情が自然に感じられるのは、彼がコミュニティーの内側から撮影していることによる。彼らにとって、ドウェックは仲間の一人であり、もはやカメラの存在を意識しなくなっているのだ。このスタイルは、その後のドウェック 作品でも不変だ。映画「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」でも、イタリア北部のトリュフハンターの老人たちと親しくなってから撮影を開始している。

彼が撮影を始めた時、すでにモントークはかなり観光地化が進行していた。しかし、平日の早朝や夕方などの時間帯には、かつての時代の残り香が残るシーンの断片が見られたのだ。オール・ヌードの若い女性がサーフボードを抱えて砂浜を颯爽とジャンプしながら走っている代表作もその一部なのだ。彼のカメラはそれらのシーンを追い求め続け、最終的に写真集の形式でモントークを人々が真に自由に生きる理想郷として描き出したのだ。
写真集が刊行されるや否や、多くのアメリカ人はドウェックの写真世界に完全に魅了されてしまった。それはドウェックの写真世界の中に、多くの人が幼少時代に垣間見た、今はなき理想のアメリカンシーンを見出したからにほかならない。また2001年に起きたアメリカ同時多発テロ事件により、当時の多くのアメリカ人が自信を失っていた。古き良き時代とは、かつて世界を主導した力強いアメリカ像と重なったことも作品の高い人気の背景にあっただろう。
ドウェックは日本人にとっても魅惑的な写真世界を提供している。彼が追い求めていたシーンは、多くの日本人が戦後に抱いていた理想とするアメリカンシーンでもある。テーマのサーフィン自体が戦後の日本人が憧れたアメリカ文化の象徴そのものだ。若い美しい男女がサーフィンを楽しみながら自由に生きるようなライフスタイルは、共同体のくびきの中で生きていた日本人が憧れる世界なのだ。テーマとしては、巨大消費システムに組み込まれたツーリズム、そして地域コミュニティーの崩壊を考えさせられる作品だと言えるだろう。

会場では「The End: Montauk, N.Y.」10周年特別版などの写真集を限定数販売する。2004年刊の、帯付のオリジナル版は、発売後わずか数週間で 5000 部を完売したという。いまでもレアブック市場で高額で販売されている。たぶん状態が非常に良い本の実売価格は500ドル(約5.75万円)~だろう。2015年に10周年記念の拡大版が刊行されたがすぐに完売。今回が限定2000部の待望の第3刷となる。

〇「The End: Montauk,N.Y.」10 周年記念 増補版
“The End: Montauk, N.Y. 2015” by Michael Dweck 10th Anniversary Expanded Edition(third edition/printing)
エッセー:マイケル・ドウェック(Michael Dweck)、
ピーター・ベアード(Peter Beard)、
ラスティー・ドラム(Rusty Drumm)
刊行:Ditch Plains Press、限定2000部
ハードカバー、サイズ 27.94 x 35.56 cm、約226ページ、モノクロ約260点、カラー15点、3点の折込ページ、オリジナル同様の半透明の帯付。
予価 22,000円(税込み)

〇開催情報

「Michael Dweck Photographs 2002-2020」
(マイケル・ドウェック 写真展)
2022年 2月16日(水)~ 4月24日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料
(*ご注意)新型コロナウイルスの感染状況によっては入場制限や予約制を導入します。詳しくは公式サイトで発表します。

ブリッツ・ギャラリー
〒153-0064 東京都目黒区下目黒6-20-29

〇映画「白いトリュフの宿る森」公式サイト

ブリッツ次回の写真展は
マイケル・ドウェック
映画「白いトリュフの宿る森」公開記念展

ブリッツ・ギャラリーの次回展は、マイケル・ドウェック(1957-)の写真展「Michael Dweck Photographs 2002-2020」となる。
ドウェックは、長年広告業界で活躍した後、40歳代に写真家に転身。ロングアイランドのモントークにおける、観光地化により消え行く地元サーフィン文化をドキュメントした「The End: Montauk, N.Y.」で2002年に作家デビュー。2008年に「Mermaids(マーメイド)」、2011年に「Habana Libre(ハバナ・リブレ)」を相次いで発表して、作家としての地位を確立する。作品は世界中のギャラリー、美術館で展示されるとともに、アート・オークションでも頻繁に取引されている。


Sonya, Poles Montauk, New York, 2002 ⓒ Michael Dweck

初期代表作“Sonya, Poles Montauk, New York, 2002”の大判サイズ作品は、2018年10月のササビーズ・ニューヨークのオークションにおいて168,750ドル(@112/約1890万円)で落札された。現存する写真家としては異例の高額落札で、市場関係者を驚かせた。2004年に刊行された彼デビュー写真集「The End: Montauk, N.Y.」(Harry N.Abrams, Inc.,刊)は、発売後わずか数週間で5000部を完売。その後レア・フォトブック市場で一時期1万ドル(@115円/約115万円)で取引されたという伝説の写真集だ。

その後のドウェックの創作活動はドキュメンタリ映画の監督/制作にシフトしている。もともと彼の写真作品や写真集は、明確なテーマと、それを伝えるストーリー性を持つヴィジュアルのシークエンスが見られた。複雑な作品テーマは静止画よりも動画の方が表現しやすい面があるのだろう。2018年には、米国地方都市の消えゆく伝統的ストックカーレースを舞台にした初の長編ドキュメンタリー映画「The Last Race」を、グレゴリー・カーショウとともに監督/制作している。


ⓒMichael Dweck and Gregory Kershaw

本展は、ドウェックがカーショウとともに監督/制作した第2作目の長編ドキュメンタリー映画「The Truffle Hunters (白いトリュフの宿る森)」の日本での劇場公開を記念して開催される。この映画は北イタリア ピエンモンテ州の秘密の森で、世界で最も高価な食品とされる<白トリュフ>を探し求める老人と忠実な犬たちの物語となる。ドウェックは、何世代にもわたって伝えられてきた伝統的なトリュフの発掘方法を知るごく少数の寡黙な人々と3年をかけて交流し信頼関係を構築する。そして現代社会では忘れ去られた、まるでおとぎ話の世界の様なトリュフ・ハンターたちのシンプルで美しいライフスタイルの映像化に初めて成功するのだ。

本展では同映画から、トリュフ・ハンターと犬、北イタリアの美しい自然風景などの写真作品を5点セレクションして展示。作品の販売収益の一部は映画の制作地であるイタリアのトリュフの森を守るための保護プログラム「Friends of the Truffle Hunters Conservation Program」(*1)に寄付される。
また、ドウェックのいままでの主要シリーズ「The End: Montauk, N.Y.(ジ・エンド・モントーク、N.Y.)」、「Mermaids(マーメイド)」、「Habana Libre(ハバナ・リブレ)」のアイランド三部作から、代表作も含めた約18点を展示する。写真から映像作品まで、幅広い分野で活躍するヴィジュアル・アーティストのドウェック。本展は彼のいままでのキャリアを本格的に回顧する写真展となる。会場では「The End: Montauk, N.Y.」10周年特別版など、過去の写真集を限定数販売する予定だ。

ⓒMichael Dweck and Gregory Kershaw

〇映画「白いトリュフの宿る森」について
マイケル・ドウェックがグレゴリー・カーショウとともに共同で監督/制作した第2作目の長編ドキュメンタリー映画。第73回全米監督協会賞ドキュメンタリー映画監督賞、第35回全米撮影監督協会ドキュメンタリー賞等を受賞している。
世界で最も希少な高額食材のアルバ産<白トリュフ>。未だかつて栽培が行われたことはなく、どのように、なぜそこに育つのか解明されていない。ドウェックは、その産地である北イタリアのピエモンテ州を旅した時に、夜になると森に<白トリュフ>を探しに出かける老人たちがいる……という言い伝えを耳にする。彼がその話に興味をもったことがきっかけで、映画制作の企画が動き出す。危険のつきまとう森の奥深く、老人たちは訓練された犬たちと共に、何世代にも伝わる伝統的な方法で<白トリュフ>を探し出す。ドウェックは約3年間にわたり彼らに密着して行動を共にする。そして信頼関係を構築したうえ、誰も成し遂げたことがない彼らの昔ながらのライフスタイルの撮影に成功したのだ。そこに映し出されるのは、大地に寄り添い、人や動物とのつながりを大切にする、まるでおとぎ話のような世界で生きる人たちだった。
ドウェックのカメラは、彼らの昔ながらの生活と現在のトリュフをとりまく様々な状況との間を行き来する。そして、現代社会に横たわる気候変動、森林破壊、貧富の格差拡大、循環経済への転換の必要性などが提示されるのだ。

同作は2022年2月18日から、Bunkamura ル・シネマ他でロードショーされる。公式サイト

(*1)「Friends of the Truffle Hunters Conservation Program」
マイケル・ドウェックとグレゴリー・カーショウは、同作を撮影中にトリュフ・ハンターとその世界に魅了された。そして撮影地の森を保全・保護するためにこのプログラムを結成する。これは映画を支えてくれた多くの個人篤志家の人々の惜しみない寄付によって成り立っている。彼らが最初に行ったのは、ピエモンテ地方にある55エーカーのトリュフの森を購入し、保護することだった。この保護活動は、15人のトリュフ・ハンターのグループ(Terre Di Tartufi)がボランティアとして現地で管理し、保護活動のサポートや将来の世代への教育を行っている。作品の販売収益の一部は、このプログラムに寄付される。

(開催情報)
「Michael Dweck Photographs 2002-2020」
(マイケル・ドウェック 写真展)
2022年 2月16日(水)~ 4月24日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料
(*ご注意)
新型コロナウイルスの感染状況によっては入場制限や予約制を導入します。詳しくは公式サイトで発表します。
ブリッツ・ギャラリー
〒153-0064 東京都目黒区下目黒6-20-29

テリ・ワイフェンバック最新作
ブルゴーニュの静謐な風景
「Until the Wind Blows」

(C) Terri Weifenbach

テリ・ワイフェンバックは長年にわたりに米国ワシントンD.C.に居を構えていた。その自宅周りにある、日常の何気ない自然風景から数々の名作が誕生している。それらは、ピンボケ画面の中にシャープにピントがあった部分が存在する、まるで夢の中にいるような、瞑想感が漂う光り輝く作品。彼女はもともとは抽象的な絵画を描いていた。それを写真で表現する可能性の探求中に生まれた作品スタイルなのだ。
現在、ブリッツで開催中の新作「Cloud Physics」。同展に寄せたエッセー「Ephemerality(はかなさ)」で書かれているように、近年彼女は拠点をフランスのパリに移している。 作品制作で試行錯誤を続ける中で、パリへの移住がきっかけとなり作品が完成した経緯が同エッセーには書かれている。

(C)Terri Weifenbach

ブリッツの展示では、iPhoneにより撮影された小サイズの美しい風景作品16点も紹介されている。本作は2021年に撮影された最新作「Until the Wind Blows」、和訳すると「風が吹くまで」のような意味になる。実は彼女とパートナーは、今年にフランス郊外のブルゴーニュ地方にある古いファームハウスを手に入れたという。外国人の不動産取得には煩雑な審査が必要で、約1年くらい手続き時間がかかったそうだ。本作は、彼女がたびたび訪れたブルゴーニュ地方での散策中に撮影された作品群となる。

(C) Terri Weifenbach

彼女は同作に以下の様なメッセージを寄せている。

「Until the Wind Blows」
この写真はとても穏やかです。
ところがしばらくして突風が吹いて木が折れたこともありました。
穏やかであること、そしてその穏やかさは永遠ではないのです。
私たちの人生のように…  地球上のすべての人にとっても…
風が吹くことがあります。また吹くことを知っています。
私たちの快適さは当てにならないのです。
テリ・ワイフェンバック

(C) Terri Weifenbach

彼女は一瞬穏やかなフランス郊外の田園地帯の風景を、波乱万丈の人間の人生に重ね合わせているのだ。「Cloud Physics」との関連では、気候変動前の嵐の前の静けさのようなシーンを意識的に提示しているとも解釈可能だろう。近年、フランスでも異常気象による豪雨により洪水が各地で発生している。 提示された作品タイトルにより、何気ない自然風景のシーンが全く違う印象を持つようになる。アーティストが世の中とどのように対峙しているかが、作品に的確に反映されている。まるでファインアート写真の教科書的な構成の作品に仕上がっている。小さなスマホで撮影されているので、彼女の通常の作品と比べると画質が劣るのは仕方ないだろう。しかし、小さな作品でも彼女のアーティストとして世界を見つめる視点は変わらないのだ。
本作は、スマホ作品の市場の可能性を探求する意味で実験的に制作されている。
各作品、すべて額とブックマット付きで、限定2点のみの販売となる。価格も彼女と相談して極めてリーズナブルにしている。もちろん裏面に彼女のサインが入っている。 フランスに拠点を移したワイフェンバックが、パリやブルゴーニュを舞台にどのような作品を生み出すか非常に楽しみだ。
本展では、「Cloud Physics」だけでなく、ぜひ「Until the Wind Blows」にも注目して欲しい。

(C) Terri Weifenbach

なお「ファインアート写真の見方」(玄光社/2021年刊)には、テリ・ワイフェンバック論を収録している。彼女の現在までのキャリアを本格的に振り返り、その作家性の秘密を探求している。興味ある人はぜひご一読を。

(開催情報)
「Cloud Physics」/「Until the Wind Blows」
テリ・ワイフェンバック写真展

ブリッツ・ギャラリー
東京都目黒区下目黒6-20-29  
JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 /
東急東横線学芸大学下車徒歩15分

2021年 11月10日(水)~2022年1月30日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料

ブリッツの次回展
テリ・ワイフェンバック写真展 「Cloud Physics」を開催!

ブリッツの次回展は、米国人写真家テリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)の写真展「Cloud Physics」となる。会期は11月10日~1月30日まで。本展は約1年半ぶりの来廊予約なしでの開催となる。

ⓒ Terri Weifenbach 禁無断転載

タイトル「Cloud Physics」は気象学・気候学と密接な関係があり、気候変動の研究と切り離すことができない大気物理学のこと。
ワイフェンバック作品は、撮影場所や時期が違っても、一貫して自然風景や植物が主要な撮影対象。彼女はそれらに、自然を愛し崇拝する感覚を持って接している。私たちが普段は見過ごしてしまうような何気ないシーンが、彼女の手にかかると特別なヴィジュアル世界へと高められる。忙しく生きる現代人にとって、身の回の自然や動植物は完全に無意識化した存在だろう。彼女の作品は、人間が自然やさらに大きい宇宙の中で生かされてい事実に気付かせてくれる。

本作でワイフェンバックは自らの自然をテーマにした作品スタイルを、大気の中で起こる様々な気象現象と関連付けて探求している。彼女は、雲と植物・生物との複雑な関係を表現するために、世界のさまざまな場所で、あらゆる季節と時間帯に撮影を敢行。その後、何千枚もの写真と、ウォレス・スティーブンスの詩を参考にした編集作業が行われる。最終的に約7年の歳月をかけて、2020-21年の都市のロックダウン中に作品は完成している。
彼女は「パンデミックが起こり、自然は我々よりも強いということが明らかになりました」とコメントしている。

本作では、天候と科学をキーワードに、地球上の雲と生物などとの複雑な関係性を、ヴィジュアルの形態や質感の探求を通して表現。フォトブック巻末には全作品の、撮影場所、撮影日、降水量、気温、湿度、風速、海面気圧の詳細なデータが記載されている。
彼女はフォトブック刊行に寄せて「私が言葉ではなく、写真で表現したいのは、気候変動によって失われるものは美しさだということです」と記している。本作では、いま世界規模で起きている様々な気候変動問題が意識されているのだ。地球温暖化による環境破壊の最前線を撮影する写真家は多くいるが、彼女はあえて美しい理想化された自然を意識的に切り取って作品化している。私たちは彼女のヴィジュアルを見るに、こんな美しい地球の風景や、精一杯生きている鳥や植物たちを大切にしないといけないと、心で直感的に理解できるのではないか。

ⓒ Terri Weifenbach 禁無断転載

本作の非常に複雑な作品制作の過程を、彼女は「Ephemerality(はかなさ)」というエッセーで語っている。本文はギャラリー内で掲示する予定だ。制作アイデアがどのように生まれ、それが作品として展開し、完成するかを丁寧にまた詩的に記している。ファンは必読だろう。

本展では、フォトブック「Cloud Physics」収録作から、デジタル・アーカイヴァル・プリント作品による約23点が展示される。
ギャラリーの展示レイアウトも彼女がディレクションしている。また同時に、iPhoneにより撮影された小サイズの新作約16点も紹介する。フランス郊外のブルゴーニュ地方で撮影された美しい風景のスナップ作品となる。

なお同名のフォトブックは、フランスAtelier EXBと米国The Ice Plantから刊行。テキストでは、写真史家のリュス・ルバール (Luce Lebart)が、ワイフェンバック作品をビジュアル・アートと環境科学の歴史的文脈の中で検証している。

本展会場ではフォトブック「Cloud Physics」の販売を予定。重いフォトブックはどうしても包装が過多になる。ブリッツでは環境を意識した本作品のテーマ趣旨を尊重して、リサイクルコットン製のエコバックに入れて販売する予定。(一部の洋書専門店でもエコバック入りで販売予定)

プレスリリース

プレス用プリント

・展示予定作品の画像の一部は、当ギャラリーホームページに掲載予定

(開催情報)

「Cloud Physics」テリ・ワイフェンバック写真展

ブリッツ・ギャラリー
東京都目黒区下目黒6-20-29
JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 /
東急東横線学芸大学下車徒歩15分

会期:2021年 11月10日(水)~2022年1月30日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料