ブリッツギャラリー今秋の予定
次回はテリ・ワイフェンバック
「Cloud Physics」展

ブリッツでは、鋤田正義の写真展「SUKITA Rare and Unseen」を完全予約制で10月11日まで開催中。銀座蔦屋書店での関連イベントが終了したことから、同店で人気の高かった“Kiyoshiro Imawano, In Memphis, 1992”や、デヴィッド・ボウイの8X10″サイズの3点セットなどが今週からブリッツで追加展示されている。

会場では、鋤田正義のオリジナル・プリントや、今までに刊行された写真集の貴重なサイン本が限定販売されている。「SUKITA ETERNITY」の3種類ある特装版の付属作品の現物も展示している。なお、ブリッツで販売する特装版は3種類とも持ち帰り用の限定トートバックが付いてくる。完全予約制なので、各1時間に限定2名の入場となる。来場客が密になることなくゆっくりと安全な環境で作品と対峙できる。コレクション希望者への個別相談にも対応している。今週末から始まるシルバーウイークの休廊は9月20日、21日。祝日の9月23日もオープンする。週末は予約が取り難い状況だが、平日や25日以降ならまだ余裕がある。
初めてブリッツへの来廊を考えている人は、私どもはあくまでも写真作品や写真集などを展示販売するコマーシャル・ギャラリーであることを理解してから予約して欲しい。本展は作品の展示数も34点程度、鋤田正義の作品を数多く紹介するイベント的な大規模写真展ではない点を予めご理解ください。

(C)Terri Weifenbach

ブリッツの次回展は、テリ・ワイフェンバックの新作展「Cloud Physics」となる。本作は、2015年に授与されたグッゲンハイム奨学金のプロジェクト。作品完成は、当初の予定よりかなり遅れているが、新型コロナウイルスの感染拡大による自宅待機で、本人は集中して編集作業に取り組めたそうだ。彼女は、自らの自然をテーマにした作品スタイルを、気象と関連付ける可能性を探求。天候と科学をキーワードに、私たちが眼で見えるものと見えないものをテーマにしており、やや難解だが「思考と感受性との関係性の提示を目指している」と本人は語っている。

Terri Weifenbach “Cloud Physics”

本展の展示レイアウトはすべて彼女が考えてくれた。昨年に埼玉の大宮で展示した「Saitama Notes」を彷彿させるような、大小様々なサイズの作品を組み合わせたシークエンスで見せる展示になっている。

写真集はフランスのAtelier EXBと米国のThe Ice Plantから刊行。テキストは写真史家/キュレーターのルーク・レバート(LUCE LEBART)が担当。2021年11月11日~14日に開催予定のパリ・フォトで初お披露目されると聞いている。世界中で撮影された作品が収録されているが、日本のファンに嬉しいのは奈良、東京、香川などで撮影されたものも含まれることだろう。

(C)Terri Weifenbach

彼女は本書に寄せて「私が言わずに残しておきたいことは、気候変動によって失われるものは美しさであるということです」と記している。本作では、まさに現代社会で世界中の人がいま大きな関心を持つ大きなテーマに挑戦しているのだ。
本書がきっかっけとなって、彼女のアーティストとしての評価がさらに高まるのではないだろうか。写真展に際しては、詳しい「Cloud Physics」の作品分析を行いたいと考えている。現在、展示用の作品はパリで制作中。写真集は10月に日本に到着予定。サイン本も含まれる。
写真展はパリ・フォトでの写真集発表に合わせて11月上旬頃に開始する予定だ。どうか楽しみにしていて欲しい!

ありのままを受け入れる
運を呼ぶ鋤田正義の写真流儀

いまブリッツで好評開催中の写真展「SUKITA Rare and Unseen」。同展の大きな特徴は、被写体のほとんどが男性だということ。代表作のデヴィッド・ボウイ、T-Rex、YMO、イギー・ポップ、 デヴィッド ・シルビアンなどはみんな男性ミュージシャン。女性が被写体の代表作は母親を撮った初期作“Mother,1957”となるのだ。
実際のところ、アート系ファッション/ポートレートの写真展では、女性の俳優、モデル、ミュージシャンなどが被写体になる場合が圧倒的に多い。しかし、これは鋤田が特に男性を専門にしているというわけではない。女性が被写体の写真作品もあり、最近では資生堂のウェブマガジン花椿の「GIRLS ROCK BEGINNINGS」という連載で、矢野顕子、尾崎亜美、小泉今日子などの日本の女性ミュージシャンを撮り下ろしている。

ところが、写真展で男性被写体の作品が大部分を占める事実は、意識して見ないとなかなか気付かない。私はこの分野を専門としているが、最初のうちはそれに全く気付かなかった。その後、これこそが鋤田によるポートレート写真の魅力の秘密なのだと気付いた。この分野の写真のコレクターはいまだに男性が多い。彼らは、自分好みのスタイルや表情の女性が被写体の写真作品を購入する傾向が強い。つまり彼らは被写体自体の魅力で作品をコレクションしているのだ。しかし、例えば鋤田によるデヴィッド・ボウイのポートレート作品は、多くの男性コレクターが購入している。ボウイには男性コレクターを魅了する色香があることは事実だろうが、購入理由は鋤田作品の高い作家性によるところが大きいと思う。つまり、ただボウイの写真が欲しいのなら、安価なスナップ的/ブロマイド的写真は世の中に数多ある。また写真集で十分だろう。
一方で、一般的な鋤田作品は、約40X50cmサイズ、エディション30で約21万円~となる。つまり鋤田作品はコレクターにとって単にボウイの写っている写真ではない。鋤田の作家性が反映されたボウイが被写体のファインアート系ポートレート写真なのだ。もちろん対等のアーティストである鋤田とボウイによるコラボ作品であるという認識もあるだろう。

先日、銀座蔦屋書店で写真集「SUKITA ETERNITY」の刊行記念のオンライントークが開催された。実はトーク終了後の控室で、鋤田から非常に興味深い若かりし時代のエピソードを聞くことができた。

1965年、鋤田は大阪から東京に移り住み、デルタモンドプロダクションに勤務し、ファッション・美容会社向けの広告キャンペーンを手掛けている。当時はちょうど既製服の女性ファッション市場が盛り上がっていた時期だった。女性ファッション誌もこの時期に相次いで生まれている。1969年に「流行通信」、1970年に旧平凡出版の「anan」、1971年に集英社の「non-no」が創刊されている。
それらの女性ファッションの分野では、写真家の立木義浩、操上和美、十文字美信、篠山紀信などが活躍していた。実は、大阪経由で東京に来た鋤田はこの女性ファッション・ブームに乗り遅れることになる。
そこで、彼が眼をつけたのは当時の売れっ子写真家が行わなかった外国人男性モデルのファッション撮影だった。その仕事の一部がメンズファッションブランドのJAZZのキャンペーンだったのだ。当時は主流でなかったメンズ・ファッション。予算は少なかったが、逆に写真家に多くの自由裁量が与えられたという。たぶん女性ファッションの仕事では、写真家はクライアント、編集、デザイナーから撮影上のかなりの制約が課せられたと思う。
鋤田は画家ルネ・マグリットに触発されたシュールレアリスム的作品のポートフォリオを制作する。写真集「SUKITA ETERNITY」も、“Jazz,1968”、“Flower I &II、1968”など5点が収録されている。

“Jazz, 1968” (C)SUKITA

これは、この時代の鋤田作品は厳密には広告だが、現在の定義でいうとファインアートになりうるファッション作品だったことを意味する。言い方を変えると、それらはJAZZの広告写真であるとともに、鋤田正義のパーソナルワークでもあったのだ。その後、このポートフォリオが鋤田の人生に大きな影響を与えることになる。

1972年、憧れの若者文化最前線のロンドンを訪問した時、T-Rexが鋤田のポートフォリオをみて、撮影セッションを承諾する。男性モデルをスタジオで撮影した作品で、彼の高い撮影技術と表現力を見抜いたのだ。そして、スタジオでライブ演奏に没頭するマーク・ボランをとらえた名作”Get it on”が誕生することになる。

“Get it on, 1972” (C)SUKITA

さらに鋤田作品は、シュールリアリズム映画「アンダルシアの犬」が好きだったデヴィッド・ボウイも魅了する。シュールなJAZZやFlowerのポートフォリオがきっかけで、撮影セッションが実現するのだ。

“Backstage By door, Royal Festival Hall, London, 1972” (C)SUKITA

若かりし鋤田は当時主流の女性ファッションを撮ることができなかった。しかし、彼はその状況を嘆くことなく、外国人男性モデルの撮影を丁寧に行って、経験や撮影ノウハウを積み重ねた。その結果に生まれたポートフォリオがきっかけとなり、ボウイを40年以上も撮影することになる。そして1977年には、名作「Heroes」のLPカバー写真が生まれたのだ。もし60年代後半に鋤田が女性ファッションを撮影していたら、現在のような世界的なファインアート系ポートレート写真家の地位はなかっただろう。

才能だけでは成功をつかむことはできない。私たちは致命的失敗という地雷をできるだけ避けながら、運を引き寄せなくてはならない。そのために必要なのは、“いつも、ものごとをありのままに受け入れること”なのだ。実はこれこそが禅で言う「空性」の意味に他ならない。「ファインアート写真の見方」でも書いたが、私は彼のこの生きる姿勢がボウイを魅了したと考えている。鋤田の歩んできたキャリアは、その時その瞬間にある仕事に全霊を注ぐことにより、運が引き寄せられることを私たちに教えてくれる。
今回の「SUKITA Rare and Unseen」展はその軌跡の展示でもある。結果的に、彼に運と成功をもたらした男性被写体の写真の展示が多くなっているのだ。

SUKITA : Rare and Unseen 鋤田 正義 写真展
2021年7月28日(水)~ 10月11日(月)
1:00PM~6:00PM / 月曜火曜休廊 / 完全予約制 / 入場無料
http://blitz-gallery.com/index.html

鋤田正義の豪華本がコロナ禍でも刊行された理由とは
オンライントークイベント8月21日に開催!

7月に世界同時発売された、鋤田正義の集大成となる本格的にキャリアを回顧する豪華写真集「SUKITA ETERNITY」。本来ならば、大規模な写真展、トークイベント、サイン会などを大々的に開催して出版を祝いたいところだ。しかし、コロナウイルスの感染状況は全く改善の兆しはない。ワクチン接種は進んでいるものの、デルタ株の蔓延で新規感染者や重症者が急増中。東京にはいまだに緊急事態宣言が発令中で、再延長される可能性が高いと言われている。アート業界を見回しても、展覧会の途中での中止など、厳しい状況が過去1年以上も続いている。鋤田正義の写真展も、2021年4月に美術館「えき」KYOTOで開催された「時間~TIME 鋤田正義写真展」が、会期途中で強制的に中止になってしまった。

しかし、ないものねだりしてもしょうがない。いまは、今回のような豪華写真集が、この厳しい環境下に刊行された事実を素直に喜びたいと思う。周りには中断や延期になった出版プロジェクトは数多くある。正直のところ、昨年の英国での感染急拡大期には「SUKITA ETERNITY」刊行の一時中断を覚悟したこともあった。コロナ禍の厳しい経済状況でも最終的にこの豪華本が出版に至ったのは、単に運が良かっただけではないだろう。やはり鋤田のポートレート作品は、ボウイなどの被写体とで共同制作された極めて優れたコラボ作品であり、そのブランド価値はコロナ禍でもあまり影響を受けないと考えられたのだと解釈したい。
出版に至る過程で、1点だけ大きな変更が行われている。ACC Art Books版カバーの掲載写真は、当初はT-Rexの「Get it on」の予定だった。それがコロナ禍の昨年秋にボウイ作品「Just for one day」に変更になったのだ。鋤田自身の提言とともに、出版社側にも70年代のスーパースターよりも、ボウイのヴィジュアルの方がブランド価値が高く、より広い世代にアピールするとの考えがあったのだろう。

”SUKITA ETERNITY” ACC Art Books版の幻のT-Rexのカヴァー・ヴァージョン

これは景気悪化時に必ず起こる、中途半端なものは売りにくくなる、という消費のトレンドと同じことだ。コロナ禍でも高級車や高級ブランド品は売れているという報道は聞いたことがあるだろう。またマンションなどの不動産も同じで、景気が悪化すると、付加価値の高い物件には買い手が集まり、価値の低い物件には値もつかないような状況が発生するという。コロナ禍ではこのような流れが加速したのだろう。アート系では、ブランド価値や知名度の低い若手新人の作品、また強いアート性が前面に出た作品ほど苦戦しているのだ。
どちらにしても、本書出版元の英国ACC Art Booksと玄光社の、この環境下における英断には心より感謝したい。

とても重い高価な豪華本なのだが、いったん出版されれば、売り上げに関しては心配無用だと考えていた。日本版は約2000部弱が特装版を含めて刊行されている。売り上げは、日本にはデヴィッド・ボウイ、T-Rex、YMO、イギー・ポップなどの熱狂的なファンがどれくらいいるか?写真家・鋤田正義のファンや応援団、フォトブック・コレクターがどれだけいるか?を想像すれば容易に予想がつくだろう。それらの人数の合計のうちで、購入してくれる熱心なファンやコレクターは、どんなに低く見積もっても、たった2000人ということはないだろう。すぐというわけではないが、完売にはそんなに長い時間がかからないのではないか。本書のような豪華本は完売したら再版されることはほとんどない。個人的には将来のレアフォトブックの候補だと考えている。

”SUKITA ETERNITY” プリント付き特装版 玄光社刊

特にプリント付きの特装版は、写真集というよりもファインアート写真の作品だと考えて欲しい。日本では、海外の出版社のような高品質のプリント付き豪華版はほとんど制作されない。今回の特装版の、豪華化粧箱、輸送ケース、などのデザイン、クオリティーなどは非常に高品質。完全に国際標準レベルをクリアしている。日本人の、編集者、デザイナー、職人による妥協のない質の高い仕事を見せてもらったと高く評価したい。
ついでに、ファインアート写真の取り扱いディーラーの視点から、特装版の将来の価値を予想してみよう。まず収録の3作品は、40X50cm、エディション30の通常サイズでは販売されていないイメージである点に注目している。貴重な作品である上に、鋤田作品の国際的な作品相場と比べて極めて割安なのだ。1枚のサイズは8×10インチと小さく、エディション数も多いが、1枚換算で約2.5万円程度で購入可能。写真集、豪華化粧箱、輸送ケースが付いていることを考えると、鋤田正義のオリジナル作品が1枚2万円程度で購入できるのだ。ちなみに、日本版の特装版は国内限定販売となっている。つまり輸出ができない契約になっているからこれだけの低価格が実現したのだ。日本のファインアート写真市場の規模は極めて小さい。鋤田が将来的な市場拡大を願って特別に配慮して低めの価格設定に協力しくれたのだ。初めて写真を買う人は、当然のこととして価格の相場感がない。できるだけ安くすることで、そのような人に買ってほしいとの願いなのだ。
ちなみに、海外のACC Art Booksにも特装版がある。販売方式が違うので単純比較はできないが、同じ8X10″サイズのプリント1枚が付いたエディション50の作品が現地価格で約5.6万円(350ポンド)もする。いや、このくらいの価格が鋤田作品の国際相場として適正なのだと思う。もしかしたらこれでも割安かもしれない。日本版は直接は海外に輸出できない。しかし、いまはグローバル経済の時代だ。遅かれ早かれ、何らかの方法で海外に流れていくと思われる。各国の市場で、同じアーティストの同様の作品に価格差が存在すると、時間経過と共に裁定取引が行われて価格差は次第になくなっていくのだ。完売後には、特装版はかなり短期間にセカンダリー市場でプレミアムが付いて売られるようになると考える。今日の段階では、特装版は3種類ともにまだ在庫があると聞いている。セールス・トークではなく、興味ある人は早く行動を起こした方が良いだろう。

現在、銀座 蔦屋書店では鋤田正義の作品展示を8月25日まで行っている。メインは、写真集表カヴァーの「David Bowie, Just for one day」、またボウイが昨年に亡くなった山本寛斎デザインのテージ衣装「TOKYO POP」を着た「Watch That Man III、1973」、忌野 清志郎を米国のメンフィスで撮影した「Kiyoshiro Imawano – In Memphis、1992」の16X20″サイズ作品3点の展示。飾りやすい小ぶりの作品中心に約15点を展示している。写真集特装版の3点のプリント作品の現物も展示されている。

なお、8月21日(土)14:00~15:30には、鋤田によるオンライントークイベントが開催される。鋤田自らが写真家人生を振り返り、写真集『SUKITA ETERNITY』についての思いを語る予定だ。普段聞くことができない、撮影時の数々の興味深いエピソードや写真の流儀などを聞くことができる貴重な機会となるだろう。写真を趣味とする人、アーティストを目指す写真家・学生、ファインアート写真・コレクションコレクションに興味のある人、などにおすすめのトークイベントだ。
実は本イベントには特典が用意されている。参加券の他に、書籍付参加券として、特別に鋤田正義のサイン入写真集『SUKITA ETERNITY』も用意される。極めて貴重なサイン本が入手できる絶好のチャンスだ。早い者勝ちなので、もし既に予定数に達していたらどうかご容赦いただきたい。

[オンライン・トークイベント開催日時]
会期:2020年8月21日(土) / 時間:14:00~15:30
聞き手 ブリッツ・ギャラリー 福川芳郎
[参加条件]
イベントチケット予約・販売サービス「Peatix」にて、以下のいずれかをご購入いただいたお客様
・イベント参加券 1,500円 (税込)
・サイン入り書籍付きイベント参加券 9,900円 (本7,000円+イベント参加費/送料・税込み)

*サイン本はなくなり次第終了。数に限りがあるのでご了承ください。

■イベントページ
https://store.tsite.jp/ginza/event/art/21493-0958440730.html

■PEATIXお申込みページ
https://peatix.com/event/2456088/view

鋤田正義「SUKITA: Rare and Unseen」
写真展の見どころ(1)

ブリッツでは、鋤田正義写真展「SUKITA: Rare and Unseen」を開催中。同展は英国ACC Art Booksの企画/編集で刊行される回顧写真集「SUKITA : ETERNITY」の刊行記念展となる。日本版は玄光社から刊行、原文は英国版原書と同じく英語表記で欧州で印刷され、日本語訳の小冊子が付いてくる。
特設サイト

東京は、8月末まで緊急事態宣言が発令中なので完全予約制での営業となる。現在は特に週末の予約は取りにくくなっている。しかし、同展は夏休み中も営業するし、10月までと開催期間を長めにとってる。どうかコロナウイルスの状況を見極めたうえで、余裕をもって予約して欲しい。
ギャラリーの公式サイトでは、インスタレーション・ヴューをアップしている。まずは、こちらをご覧になって写真展会場の気分を味わっていただきたい。今回は、展示画像と共に写真展の見どころの解説を行いたい。

本展の大きな見どころは、鋤田とデヴィッド・ボウイとのセッションにおける数々の未発表作や代表作のアザー・カットの展示となる。鋤田は2021年5月に83歳になった。いまやボウイなどの親しかった多くの被写体たち、また親交があった同世代の写真家テリー・オニールなども亡くなっている。
今回のキャリアを回顧する写真集刊行に際して、膨大な作品アーカイブスの本格的な調査が行われ、その過程で数多くの未発表作が発見され、一部作品は今回の写真集にも収録されている。

今回は、鋤田アーカイブスの調査結果を紹介する最初の写真展となる。ヴィンテージ作品はすべて参考展示となり、販売はされない。市場価値は、だいたい6,250ポンド(約95万円)くらいだと思われる。それら7作品はギャラリーの中央あたり展示されている。たぶんボウイの写真集「気」(TOKYO FM出版、1992年刊)制作時にプリントされた作品だと思われる。
作品の中には、ソフトな感じの雰囲気を狙って、いわゆる紗がかかったようなプリントが多くみられる。鋤田によると、それらはすべて暗室作業で作り出されたものだという。通常は薄い布が使われるのだが、彼は女性用のストッキングを使用したとのことだ。納得のいく効果を得るために、様々な種類のストッキングと露光時間を試みたという。いまは画像処理ソフトで同様の効果を出すことができるのだが、当時は1回ごとのアナログ作業だった。気の遠くなるほどの試行錯誤を行ったのだと想像できる。理想のボウイ像を創り出すための、鋤田の並々ならぬ執念を感じる作品群だ。
ちなみにこれらは、ファインアート写真の専門用語で規定されているヴィンテージ・プリントではない。それらは、写真撮影からだいたい3年~5年以内にプリントされた作品とされている。しかし、写真家の手作業で丁寧に制作された作品は極めて価値が高いといえるだろう。

本展では、写真集「SUKITA : ETERNITY」からの代表作も展示している。表カバーの「David Bowie, Just for one day」と、裏カバーの「T-Rex, Get it on」は、30X40″(約76X101cm)は大判サイズでの展示。前者はエディション10、後者がエディション8の作品となる。

「Just for one day」は、ほかに16X20″/エディション30と20X24″/エディション20の小さめ作品が販売されている。以前、銀座蔦屋書店のオンライントークイベントで指摘したように、この作品は販売価格の逆転現象が起きている。実は本作品は通常の英国からではなく、日本で初めて販売が開始された。もちろん販売開始時は、小さいサイズが安く、大きいサイズが高く設定されている。しかし日本は住宅事情から小さめのサイズの方が圧倒的に人気が高い。従って16X20″はなんと完売が近くまで売れてしまい、販売価格が大幅上昇。3サイズの中で一番高額な約80万円以上になっている。30X40″の大判サイズは、本日時点で約44万円と一番安いのだ。ただし、サイズが大きいので、額装費用は高額になる。またプリントの平滑性を保つために裏打ちが必要になる。それを考慮しても、まだ16X20″と20X24″よりも安く購入できるのだ。市場価格の歪みは、遅かれ早かれ、海外のコレクターやディーラーから注文が入ることで適正に戻ると思われる。「Just for one day」は、英国ACC Art Books版でもカバーを飾っている。広い展示スペースが確保できるなら、写真集の表紙を飾る本作はまさにお薦めの1点といえるだろう。興味ある人はできるだけ早く問い合わせて欲しい。

銀座 蔦屋書店 展示風景

現在、銀座蔦屋書店でも鋤田正義作品の展示を8月25日まで行っている。メインは、前述の写真集表カバーの「David Bowie, Just for one day」、また昨年亡くなった山本寛斎さんがデザインしたステージ衣装「TOKYO POP」を着たデヴィッド・ボウイ「Watch That Man III、1973」、忌野 清志郎を米国のメンフィスで撮影した「Kiyoshiro Imawano – In Memphis、1992」の16X20″サイズ作品3点の展示となる。その他、「ヒーローズ・セッション」から生まれた、ボウイが手でそれぞれ目、耳、口を隠している「見ざる、言わざる、聞かざる」の3点セットも必見だろう。写真集特装版の3点のプリント作品の現物も展示されている。飾りやすい小ぶりの作品中心に約15点を展示している。

なお。8月21日(土)14:00~16:00には、鋤田正義によるオンライントークイベントも企画されている。参加条件などの詳細は近日中に発表予定とのことだ。
銀座蔦屋書店

次回、写真展の見どころ(2)に続く

ブリッツ・ギャラリー今後の予定
“SUKITA: Rare & Unseen”展
開催!

「ファインアート写真の見方」(玄光社)に紹介されている写真家/アーティストの作品やフォトブックを展示するグループ展「Fine Art Photography Now(ファインアート写真の現在)」展は、緊急事態宣言により延長してきたが7月4日(日)まで。東京はまん延防止等重点措置地域なので、引き続き予約制での営業となる。

次回展は、鋤田正義写真展「SUKITA: Rare & Unseen」を開催する。同展は鋤田の英国ACC Art Booksの企画/編集で刊行される初の本格的回顧写真集「SUKITA : ETERNITY」の刊行記念展となる。日本版は玄光社から刊行、原文は英国版原書と同じく英語表記で欧州の工場において印刷、日本語訳の小冊子が付いてくる。

特設サイト

このたび、日本版の発売日が7月28日に正式決定。プリント付き特装版も専用サイトで7月1日から予約開始となった。写真集の発売に合わせて、写真展の開始日もやっと7月28日に決定した。
特装版は、布張りケース入りの豪華写真集とともにプリント作品が付いてくる。3種類あり、3枚セットAが80点、2枚セットBが80点、2枚セットCが40セットとなる。写真展会場では、実際のプリントを見ることができる。
こちらは、ファインアート写真の市場規模が極めて小さな日本国内向けの限定販売となる点に注目して欲しい。サイズが小さめの20X25cm、エディション数合計200と比較的多いものの、鋤田正義のオリジナル・プリントの国際価格と比べて非常に割安に価格設定されている。写真が売れない日本で、ファインアート写真コレクションの定着を願う、鋤田本人の強い意向で実現したのだ。もちろん全てのプリント作品は鋤田の直筆サイン入り。もし絵柄が好きならば、初めてファインアート写真を買う人には最適の選択ではないだろう。

(C)SUKITA 、3種類のプリントの1枚、Aセット、Bセットの収録作品

今回の写真展の大きな見どころは、鋤田とボウイとのセッションにおける未発表作や代表作のアザー・カットの展示となる。鋤田は2021年5月に83歳になった。いまやデヴィッド・ボウイなどの親しかった多くの被写体たち、また親交があった同世代の写真家テリー・オニールなども亡くなっている。
ここ数年、彼は新たな視点から過去の作品群の総合的な見直し作業が必要だと意識するようになる。今回のキャリアを回顧する写真集刊行に際して、膨大な作品アーカイブスの本格的な調査が行われたのだ。数多くの未発表作が発見され、一部作品は今回の写真集にも収録されている。本展は、鋤田アーカイブスの調査結果を紹介する最初の写真展となる。新発見された、撮影当時に鋤田本人がプリントした貴重なヴィンテージ作品を中心に、新刊写真集収録のエディション付き代表作品があわせて展示される

(C)SUKITA、展示されるヴィンテージ作品
(C)SUKITA、展示されるヴィンテージ作品

本展の開催期間となる7月下旬から8月は、アート業界は夏休み期間で休廊が一般的。極めて異例の時期の写真展となるので、開催期間については検討中だ。またまん延防止等重点措置の延長も取りざたされている。イベント等の開催については状況を見て判断するつもりだ。
なお銀座 蔦屋書店でも「SUKITA : ETERNITY」刊行記念の写真作品展示が予定されている。こちらでも、カヴァー作品「Just for one day, 1977」などの代表作を見ることができる。
写真展の正式な会期や、イベント開催の詳細が決まったらギャラリー公式サイトで発表します。

オンライントークイベントを
銀座 蔦屋書店主催で開催!
『ファインアート写真の見方』
刊行記念連続トーク

本年4月に「ファインアート写真の見方」が玄光社より刊行された。ブリッツ・ギャラリーでは刊行記念展「Fine Art Photography Now」を6月20日まで開催中。(会期は7月4日まで再延期の予定)本展では、作品解説や無料ポートフォリオ・レビューなどの開催を企画していたが、残念ながら東京都の緊急事態宣言延長のため開催延期となった。

この度、銀座 蔦屋書店様の主催で、オンライントークイベント開催が決定した。

16日の第1回は、同書の内容の中から、写真コレクションに興味ある人を対象に「アート写真コレクションをはじめよう」を行う。コレクションの基本的考え方、海外市場の現在、作品評価ルールの変遷と最新トレンド、ファインアート写真投資の可能性、いま何を買うべきか/ギャラリストの特選情報なども話す予定だ。特典として、書籍には写真画像のようなブリッツの過去の写真展の大判カードが複数枚付いてくる。
今回、トークイベントの目玉として、近日発売予定の鋤田正義写真集や、今秋発売予定のテリ・ワイフェンバック写真集の最新情報をいち早く参加者に提供する予定だ。もちろん、人気の高いコレクター注目のプリント付き特装版情報も含まれる。また後日、第1回参加者に対する、ファインアート写真コレクションの個別アドバイスを東京目黒のブリッツ・ギャラリーで行う予定。こちらは写真展の開催期間に、予約制(無料)での実施となる。希望者は、ギャラリー公式サイトからお問い合わせください。

24日の第2回は、写真でのファインアート表現を目指す人を対象として、「アートとしてコレクションされる写真作品×公開ミニポートフォリオレビュー」を開催予定。講義では、ファインアート写真のポートフォリオ作品への取り組み方を解説。内容は、写真の機能別分類、市場での写真評価の実際、ギャラリーの仕事/役割、作品テーマの見つけ方、フォトブックの可能性、成功の方程式はあるのか、ポートフォリオ・レビューへの取り組み姿勢など。講義の後には、2名に対面式公開ミニポートフォリオレビューを行う予定。

なお第2回の参加者(講義受講のみを含む)には、以下の様な対面式レビューの特典も用意した。

〇対面式ポートフォリオ・レビュー
オンライントークイベント参加者が、講義内容を踏まえて制作を行い、作品が完成した場合、後日に対面式ポートフォリオ・レビューを東京目黒のブリッツ・ギャラリーで行う。(予約制/有料)個別に評価やアドバイスを受けることが可能。

〇ポートフォリオ・コンサルテーション
講義内容を参考にして制作に取り組んでみたものの、どうしても作品テーマの方向性が見つからない人に対しては、後日に対面式ポートフォリオ・コンサルテーションを上記ギャラリーで行う。(予約制/有料) 個別に作品制作のためのアドバイスを受けることが可能。

(ご注意)
ポートフォリオ・レビュー/ポートフォリオ・コンサルテーションの希望者は直接にギャラリー公式サイトからお問い合わせください。

詳しくは以下の銀座 蔦屋書店イベントページからどうぞ。興味ある人はぜひご参加ください!

第1回のイベントページ
お申込み先のPeatix のページ

第2回のイベントページ
お申込み先のPeatix のページ

“Fine Art Photography Now”展スタート!
ファインアート写真の見方を作品で紹介

ブリッツでは、「ファインアート写真の見方」(玄光社)の刊行を記念して、同書で紹介されている写真家/アーティストの作品やフォトブックを展示するグループ展「Fine Art Photography Now(ファインアート写真の現在)」展がスタートした。


同展は東京の緊急事態宣言解除を念頭に置いて開始日を決めていた。しかし、残念ながら緊急事態宣言が5月末まで継続されることになり、不要不急の外出自粛が求められるようになってしまった。東京のほとんどの美術館はいま休館中だ。本当に残念だが、多くのお客様に来廊をすすめることが困難な状況となってしまった。本展では、各種イベントを通して書籍購読者による同書に関する各種の疑問や質問に個別に答える予定だった。しかし当初予定していた、トークイベントやポートフォリオレビューは延期となった。

始まったばかりなのだが、5月末の緊急事態宣言解除を期待して、当初の6月6日までの会期を20日くらいまで延長することを検討している。会期が延びるので、来廊を予定していた人はどうか無理をしないでほしい。

本展では、「ファインアート写真の見方」で紹介されている写真家/アーティストの以下の作品やフォトブックを展示している。設営してみると思いのほか見ごたえのある内容の展示になった。以下が展示作品、フォトブックとなる。

・オリジナルプリント
ヘルムート・ニュートン、リチャード・アヴェドン、ルイス・フォア、ジャンルー・シーフ、ウジェーヌ・アジェ、テリ・ワイフェンバック、マイケル・デウィック、鋤田正義、マーカース・クリンコ、ジャスティン・ヴィルヌーブ、ダフィー、ウィリアム・ワイリー、戦前フランスのファウンドフォトなど約28点。

・フォトブック
リチャード・アヴェドン、アーヴィング・ペン、ロバート・フランク、アンドレ・ケルテス、ピーター・ビアード、ライアン・マッッギンレー、マイケル・デウィック、テリ・ワイフェンバック、アレック・ソスなど。

(ご注意)
本展は新型コロナウイルス感染防止のため、完全アポイントメント制での実施となります。会場では厳重な感染対策を行い開催いたします。なお東京の感染状況が緩和した場合は、営業方法を変更する場合があります。詳しくはギャラリー公式サイトで発表します。

鋤田正義のキャリアを回顧する SUKITA : ETERNITY
6月下旬に発売!!

鋤田正義のキャリアを本格的に回顧する「SUKITA : ETERNITY」が 6月中旬に英国のACC Art Booksから刊行される。(6月14日発売予定)日本版も6月下旬に玄光社から発売される。この写真集刊行の意義は「ファインアート写真の見方」で詳しく分析しているのでここでは触れないことにする。鋤田ファンの人にはぜひ読んでいただきたい。

今回は、日本版のいくつかの特徴をいち早く紹介したい。実は、本書はオリジナルの英語版を再編集した日本語版ではないのだ。国内出版社による日本語版を毛嫌いするフォトブックコレクターは多いと思う。実は私もその一人で、洋書英語版と日本版が存在する場合、いくらテキストが日本語訳で読みやすくても絶対に洋書を購入する。オリジナルの英文を日本語に訳した本だと、どうしてもオリジナル版でのテキストと写真とのデザインの調和が崩れて、全体的にアンバランスな印象が強くなるのだ。違和感を感じるともいえるだろう。しかし、今回の「SUKITA : ETERNITY」は、コレクション志向が強い人の好みを十分に配慮している。日本版といっても、印刷は洋書と同様のベルギーの工場で行っているのだ。つまり日本版でも写真はもちろん中身は英国版と全く同じ、テキストもすべて英語表記なのだ。唯一の違いは出版情報を掲載する奥付け部分の記載のみが日本語になっているだけ。そして、英文テキストの日本語訳が小冊子として付いてくるのだ。クルマ好きの人なら、ホンダの「シビックタイプR」などの日本仕様車が英国工場で生産され輸入されている構図を思い起こしてほしい。

写真集サンプルを持つ鋤田正義。左側がACC版、右側が玄光社版。

ただし、表紙周りの仕様が若干違う。英語版は布張りで写真が貼られている。日本版はダストジャケット付きで帯も追加される。嬉しいことに日本版の販売価格は洋書より若干安くなる予定だ。
表紙の作品はともに鋤田のデヴィッド・ボウイ代表作「Just for one day, 1977」。ただし裏表紙は違う。英語版は鋤田の母親の写真、日本版はこれも鋤田のマーク・ボランの代表作「Get It On, 1972」となる。
ハード版、サイズは約33.1X257cm、約257ページで、”Early Work”, “T Rex”, “David Bowie”, “Iggy Pop”, “YMO”, “East”, “West”, “Theatre & Cinema”, “Journeys”の9章で構成。代表作、未発表作を含む多数のカラー/モノクロ図版が収録されている。アマゾンでは現在洋書の英国ACC社版の予約のみが公開されている。近日中に日本語訳小冊子付の日本版の価格が正式決定される。
アマゾンや玄光社の公式サイトで予約受付が近日中に開始される予定なので、どうか今しばらお待ちいただきたい。写真集の発送開始は6月下旬から7月上旬と思われる。

“David Bowie, Dawn of Hope, 1973” (C)SUKITA

今回、注目して欲しいのが日本版のプリント付きの限定特装版。豪華な布張りの特製ケース付きのコレクターズ・アイテムだ。

“David Bowie, Dawn of Hope, 1973”, “David Bowie, from “Heroes” Session, 1977″、”Tate Modern, 2008″ の3種類の作品が用意されている。

“David Bowie, from “Heroes” Session, 1977″ (C) SUKITA

すべて鋤田正義の直筆サイン入りだ。写真サイズは8X10″(約20.3X25.4cm)を予定している。そして3種類の仕様の限定特装版が販売予定だ。コレクター向けに全作が収録される3枚セットが70点、特にボウイ・ファンのために、”David Bowie, Dawn of Hope, 1973″と”Tate Modern, 2008″の2枚セットが90点、”David Bowie, from “Heroes” Session, 1977″ と”Tate Modern, 2008″の2枚セットが40点の2種類用意される。

“Tate Modern, 2008” (C) SUKITA

海外では、鋤田正義作品はファインアート作品だと考えられている。しかし、日本では写真全般がファインアートだとは考えられていない。したがって市場規模は欧米と比べてはるかに小さい。今回はそのような日本市場の特殊性に配慮して、国内限定販売としてかなり魅力的な価格設定を予定している。
3枚セットは税込み7万円台、2種類ある2枚セットは税込み4万円台になりそうだ。鋤田の40X50cmサイズの、エディション30の作品は約20.6万円(税込み)から、エディション完売が近い人気作品は高額だ。今回のセットはエディション数が多く、サイズが小さいものの、極めてお買い得だといえるだろう。これは、日本でも写真がファインアート作品としてコレクションの対象になってほしいという鋤田の願いが込められている。ぜひ最初の1枚のコレクションとして今回のプリント付き特装版を検討して欲しいということなのだ。

3種類のセットすべてに、モノクロのパーソナルワークが含まれる、これはボウイのポートレートがきっかけで、優れた写真作品の魅力にも気付いてほしいという思いが反映されている。現在、最終的なコスト計算が行われている。プリント付き特装版の予約受付開始の時期、受付方法、販売価格はいまのところ未定。正式決定後に玄光社、ブリッツの公式サイト、アートフォトサイトなどで発表します。

鋤田正義写真集“SUKITA : ETERNITY”
B4変型判(33.1X257cm)/上製本256ページ/翻訳小冊子付き

鋤田正義の代表的な写真ともいえるデヴィット・ボウイを代表するミュージシャンのポートレートのほか、キャリアを通して撮影してきたストリート、風景、静物などが初めて明らかになる写真集。鋤田が半生を振り返ったとき、「あこがれ」を追い求めてきたと語る作品が収録された集大成とも言えるこの写真集は、鋤田の作家性の再評価が始まると言える 1 冊です。

「ファインアート写真の見方」発売
写真はアート?評価基準は?
すべての疑問を解消!

ブリッツは昨年の3月から約1年間、ずっと完全予約制での営業を余儀なくされてきた。つまり、ギャラリーは基本クローズで、予約が入った時間帯のみに感染対策を行いオープンするというものだ。この間は不要不急の外出自粛が求められていたので、集客をアピールするような告知活動はできなかった。
個人的には、昨年秋に開催した「Pictures of Hope」などは、時節が反映されたとても良くキュレーションされたグループ展だったと思っている。多くの人に見てもらえなくてとても残念だった。
長年行っている講座やワークショップは、多くの人が集まって写真作品を前に議論を交わす密になりがちな場だ。これも感染防止から1年間以上に渡り開催を自粛してきた。

ギャラリーが閉まっているので、さぞかし暇を持て余していたと思われるかもしれない。実は状況は真逆で、特に昨年夏場以降は極めて忙しかった。実は「ファインアート写真の見方」(玄光社)という本の執筆をずっと行ってきたのだ。本を書こうとしたきっかけは、ギャラリー店頭で来廊者から聞かれる素朴な疑問からだった。最近、特に若い世代の人たちから、日本で写真作品が評価される理由が理解できない、教えて欲しいという質問を多く投げかけられた。年齢的には、2000年以降に成人を迎えたミレニアル世代以降の人たちだと思う。具体的な疑問は、美術館/ギャラリーの写真展での企画意図や、木村伊兵衛写真賞やキャノン写真新世紀などの写真賞の選考理由が不明などというものだった。一般の人は、ファインアートの写真は専門家だけにしかわからない難解で特別な世界だと考えるようになっていると感じた。それゆえに本書の帯のコピーは「今こそ知りたい!評価される写真の規準と値段 すべての写真ファンの疑問を解消」となっている。
そのような人たちへの説明には、とても時間がかかった。質問者の持つ知識や情報量にはかなりばらつきがあり、解説前にまず前提条件を説明する必要があったからだ。ギャラリーの立ち話では断片的な説明しかできないので、いままでは講座やワークショップへの参加を促していた。しかし、コロナウィルスの感染拡大で、それらの開催は長期に渡り自粛が求められた。
それならば、本にまとめれば需要があるのではないかと考えたのだ。調べてみると、現代アートの見方の解説本はあまたあるが、写真をファインアートの視点から系統立てて解説する本は日本ではまだ書かれていなかった。
しかし本書はあくまでも一人のギャラリストによる、パーソナルな視点の一般向けの入門書である点は強調しておきたい。世の中には様々な意見があるのは承知している。本書は市場での取引実績を基準にして書かれている。しかし、市場を重視しない考え方もある。本書に書かれたことが絶対ではなく、数多あるファインアート写真ルールのひとつにすぎないのだ。当たり前だが、研究者や学者が書いた、専門家対象の高尚な学術書の類ではない。

本のベースは、20年くらい継続して行っている「ファインアート・フォトグラファー講座」の内容だ。これは写真をギャラリーで売りたい、という写真家の人たちへの対応がきっかけで始まった。最初のうちは、質問者に対して個別に対応し、ファインアート写真の定義、マーケットの仕組み、ポートフォリオの制作方法など、海外市場での一般的な考え方を説明してきた。その後、同様の問い合わせが非常に多かったのでセミナー形式にしたのだ。
最初はプロ・アマチュアの写真家が参加者の中心だった。次第にコレクションに興味ある人、自分でギャラリーを運営したい人なども増えて内容の範囲がひろがった。本書で展開してきた考え方は、すべて現場での参加者とのやり取りを通して生まれてきた。
今回、講座初期のレジメを見直す機会があった。本書でも触れているが、時間と共にファインアート写真の評価ルールがどんどん更新され、講座内容も変化してきた事実が確認できた。特に写真のデジタル化と現代アート市場の隆盛が、従来からある20世紀写真に大きな影響をもたらした事実が再確認できた。
2010年代になると、海外市場の方法論を日本にそのまま導入するのには無理がある事実に気付いた。それまで、セミナーを継続してきたが、その内容を参考にして作品制作を継続する人がほとんど生まれなかったからだ。そこで日本独自のファインアート写真の価値基準の提示を思いついた。本ブログの読者にはなじみのある「写真の見立て」だ。本書ではその内容の一部を紹介している。

本書は、写真好きの一般の人、アマチュア・プロ写真家、コレクターなどを対象に、ファインアート写真の見方をステップアップで学べる入門書として書かれている。実はファインアート写真には、その時々の評価ルールがあり、それを学んでいくことで見方が獲得できるのだ。

しかし、決して簡単で単純なノウハウが存在していて、それを学べば誰でもすぐに理解できるわけではない。本書を読み進めればと分かると思うが、かなり複雑な内容を含み、前提とする知識の積み上げなしには理解しにくい箇所もあるのだ。私はライフワークとして一生付き合っていける高度な知的遊戯だと考えている。教養としてファインアート写真に興味のある人、コレクションに興味ある人には最適な本だと思う。

また具体例として市場で作品人気の高い写真家/アーティストの評価理由も解説している。ロバート・フランク、ソール・ライター、アンドレ・ケルテス、スティーブンス・ショア、ウィリアム・エグルストン、ヘルムート・ニュートン、リチャード・アヴェドン、アンドレアス・グルスキー、ピーター・ビアード、ヴォルフガング・ティルマンズ、マイケル・デウイック、テリ・ワイフェンバック、アレック・ソス、ライアン・マッギンレー、鋤田正義、ヴィヴィアン・マイヤー、ノーマン・パーキンソンなどをディープに分析している。

もちろん写真表現でアーティストを目指す人も意識して書かれている。現在、新型コロナウィルス感染症の影響で写真撮影や写真展開催などの創作活動の制限を余儀なくされている人が数多くいると思う。アーティスト志望者は、まさに自らを客観視して、創作活動を基本から見直す良い時期ではないだろうか。なかなか知ることのできない、作品テーマの見つけ方、成功するキャリアの秘訣、ギャラリーの写真評価方法、フォトブック制作方法なども解説しているのでぜひ参考にしてほしい。

コレクションに興味を持つ人ももちろん対象だ。作品の価値がどのように決まるかを、20世紀写真、21世紀写真に分けて解説している。具体的に何を買うか、情報収集法、指南書ガイド、コレクション展示方や収蔵方にも触れている。また過去にファインアート・フォトグラファー講座に参加した人は、受講内容の復習にもなるだろう。

本書は、4月5日に発売予定です。約352ページのかなり分厚い本になりました。ぜひ店頭で手に取ってご覧になってみてください。
https://www.artphoto-site.com/news.html

アマゾンでもご予約可能です。

出版社のウェブサイト

テリー・オニール写真展
「Every Picture Tells a Story」
会期延長が決定!

ブリッツは英国人写真家テリー・オニール(1938 – 2019)の追悼写真展「Every Picture Tells a Story」を1月15日から完全予約制で開催中だ。
しかし開催期間はずっと緊急事態宣言が継続されており、不要不急の外出が求められていた。また感染状況が一向に改善しないことから宣言は3月21日まで延長されることになった。東京では新規感染者数の下げ止まり傾向との報道もあり、現段階では21日に解除されるかは不透明な状況だ。

本展はテリー・オニールの生前に制作された、本人の直筆サイン入りの貴重なライフタイム・プリントの展示となる。一部の代表作は既にエディションが完売しており、オークションでの取り扱いのみになっている。残念ながら、緊急事態宣言により、多くのお客様に来廊を積極的にすすめることが困難な状況が続いていた。また会期終了の28日が近いことから、問い合わせが増加し、緊急事態宣言下に無理して来廊するお客様の増加も予想される。
したがって、ブリッツではいったん3月28日に会期を終了するものの、4月7日から5月9日まで、新たに約1か月程度期間を延長して写真展を開催すことを決定した。展示内容には変更がない予定だ。従って、会期末に来廊を予定していた人は、どうか無理しないでほしい。4月になり、暖かくなることで新型コロナウイルスの感染状況が改善することを心から願いたい。
完全予約制を継続するか、それとも一般公開とするかの対応は、緊急事態宣言が解除されてから検討したい。

テリー・オニール作品の人気は死後も全く衰えていない。サザビーズ・ロンドンでは2021年3月16日まで「Made in Britan」をオンライン開催している。

Sotheby’s London「Made in Britain」

これは英国を舞台に活躍しているアーティストによる、絵画、版画、写真、デザイン、オブジェ、セラミックなどの作品を販売する企画オークション。写真は26点が出品されているが、テリー・オニール作品は、エルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイ、オードリー・ヘップバーン、ブリジッド・バルドー、ショーン・コネリー、ラクウェル・ウェルチの6作品が出品されている。
代表作の<<Brigitte Bardot, Spain, 1971>>も、ロンドンのHackelBury Fine Artが販売した16X20″の銀塩作品が出品されている。

Terry O’Neill , Brigitte Bardot, Spain, 1971, (C)Iconic Images

本作はエディションが完売しているので、欲しい人はオークションで購入するしかない。落札予想価格は5000~7000ポンド(@150/約75~105万円) 、すでに3月15日時点で8000ポンド(約120万円)のビットが入っている。

Sotheby’s 「Made in Britan」